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核酸医薬品TDM-812の動向を解説する!

いつもお世話になっております!

今日は3Dマトリックスが国立がんセンターと共同開発しているトリプルネガティブ乳がん治療薬「TDM-812」について整理したいと思います。

 

目次

TDM-812はこんなお薬だ!

TDM-812は、治療効果が見られなかったり、治療の効果が弱まっている「トリプルネガティブ乳がん」を適応とする「核酸医薬品」。

核酸医薬品は次世代の医薬品として注目を集めているもので、DNAやRNAを用いたお薬です。

 

例えば、がん細胞さん。

 

DNAやRNAを使って身体に悪いたんぱく質をポコポコ作ったり、がん細胞を守ったりしていました。

今までの低分子医薬品といわれるお薬は、このたんぱく質を標的とするもの。

一方の核酸医薬品はDNAやRNAに作用して、そもそも悪いたんぱく質が作られないようにしたり、がん細胞の防御機能を弱めたりしちゃいます。

 

今回、国立のがんセンターが発見した遺伝子「RPN2」。

がん細胞に特異的に発現する遺伝子で、抗がん剤を細胞の外に排出していることが分かりました。

また「RPN2」は、がん細胞をポコポコ生み出すがんの親玉「がん幹細胞」を作り出す役割も担っていたのです。

 

それなら「RPN2」を抑制してやればいいじゃない?

ってことで、がんセンターはこのRPN2の発現を抑えて、乳がんの幹細胞をやっつける核酸(siRNA)を開発したというわけ。

 

ただ一つ大きな問題が。

それは核酸は体内で分解されやすいってこと。

薬効が発揮される前に簡単に吸収されちゃいます。

そこで核酸の分解を防いで、がん細胞に核酸を効率的に届けるためのDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)に3Dマトリックスのペプチドが採用されました。

 

「A6K」という自己組織化ペプチドです。

がんセンターのRNAと「A6K」を混ぜてやると、うまくくっついて複合体を形成してくれます。

なんでかというと、RNAはマイナスの電荷を帯びていて、「A6K」はプラスの電荷を帯びているから。

 

お互いに引かれあうRNAとA6K……。

 

下のようなナノチューブ構造の「A6K」に「siRNA」が付着した複合体(TDM-812)にすることで、生体内でsiRNAが分解されにくくなるとともに、がん細胞へのsiRNAの取り込みが促進されます。

【出典:TDM-812説明資料】

分解抵抗性が高まっているのは、下記のデータを見れば一目瞭然。

下の白くなってるのがsiRNA。

siRNA単独だと一時間も持たずに分解されていますが、A6Kとの複合体(TDM-812)だと、消えずに安定化していることが分かります。

動物モデルによると11日間、分解されることなく体内に留まっていたそうな。

【出典】3Dマトリックス2016年4月期上半期決算説明資料

このように安定化することで、RNAが分解されることなくしっかりがん細胞に到達してくれるわけです。

 

また、これが良いのが製剤化のコストも安いだろうってことが容易に想像できること。

なんてったって「A6K」に「siRNA」を混ぜ合わせるだけで、あとは勝手に複合体を形成してくれるので。

製薬企業に買ってもらうにはコストも大事。

製剤化が簡単っていうのは大きな利点じゃないでしょうか。

 

同じくDDS技術を持つ会社として、ナノキャリアがあります。

ナノキャリアの技術「ナノミセル」では、抗がん剤のシスプラチンの半減期が通常では30分のところ、ミセル化によって100時間以上まで延長することに成功しています。

3Dマトリックスがいう11日間が半減期のことを言っているのか、完全に消えたことを言っているのか分かりませんが、同等程度の徐放性はありそう。

 

もちろん、3DマトリックスのDDSが適応できるのはプラスの電荷を帯びているRNA等、限定的。

幅広く既存の抗がん剤までミセル化できるっていう点では、ナノミセルも素晴らしい技術だと思います。

2兆円という巨大DDS市場。

マトちゃんレベルの会社が全部を取りに行く必要はありません。

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では動物実験の結果を見てみよう!

気になるTDM-812の効果はどのくらいあるのか。

それはヒトで行う治験で明らかになってくるわけですが、ひとまず結果を推測するために動物実験の結果を見てみましょう。

下記はがんを移植したネズミさんにTDMー812を投与したもの。

【出典:3Dマトリックス決算説明資料】

 

なんにもしなかった場合はガンがどんどん大きくなっていますが、812を投与すると1回投与しただけで癌は縮小。

一週間後には完全に消失しています。

 

こりゃスゲー!!

 

 

ってなりますが、この試験はあくまでも実験的なもの。

そしてそんなに驚くべき結果でもないです。

動物実験でヒトのがん細胞をマウスに移植して実験するケースはよくありますが、同じようにヒトに効くかというと別問題と認識しています(もちろん、ド素人の認識ですが……)。

 

あくまでも移植したがんってマウスにとっては異物なんですよね。

追い出せ追い出せ効果が強く働いたり、いくらがんが全盛期のマイクタイソンみたいなやつだったとしても、今まで暮らしてきた学校から全然違うところに転校したら、がんだって気弱になっちゃうよなぁみたいな話で(……)。

 

ですので、ヒトのがん細胞をマウスに移植した異種移植モデルでは、ちょっとしたきっかけでがんが消えてしまうこともあります(がんの消失や縮小は薬の投与との因果関係を正確に反映したものではないと思っています。ド素人考えですが)。

「臨床の結果を必ずしも予測できない」という声はしばしば聞かれるところです。

 

一言でいうと、ネズミさんでは大成功したのに 、ヒトでは全然効かなかったってことは普通にあるぞってこと。

なので、個人的には「(ヒトの腫瘍を移植した)マウスのガンが完全に消えた!」って話を聞いても過剰反応しないようにしています(オンコの悪口じゃないよ)。

 

それよりも注目は次のグラフです。

【出典:3Dマトリックス決算説明資料】

3Dマトリックスはネズミさんの実験に成功し、次にイヌで実験をしました。

これがネズミさんのケースよりも期待できるのが、乳がんが自然発症したイヌを用いた実験だということです。

ネズミよりも人間に近く、さらに自然発症したイヌ。

そしてがんセンターの落合先生によると「イヌの腫瘍でもヒトの腫瘍と同様にRPN2が高発現し、治療抵抗性を持っていた」とのこと。

 

このイヌに対して乳がんの発生を抑制する遺伝子を組み込んだ「TDM-812」を投与したところ、上のグラフのように瘍体積が半分に縮小し、延命効果も確認された。

非常に意義のある結果でしょーよ!

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治験の概要は!?

「臨床試験登録情報」を見てみますと、トリプルネガティブ乳がん患者さんに週1回、TDM-812を投与するもの。

主要評価項目は安全性忍容性

副次評価項目は有害事象発現割合、局所奏効割合です。

治験の終了は2018年1月末となっています。

そこからデータ解析をして発表となるので、今期中(2019年5月期)には発表になるでしょう。

 

今回の治験の目的は「安全性・忍容性の評価と局所内への投与量の推奨割合を決める」こと。

フェイズ1ですから、偽薬との比較試験でもなく、オープンラベル(医者も患者もTDM-812が投与されていることが分かっている治験)で行われます。

現在まで治験が中止されていないことから、おそらく主要評価項目である安全性・忍容性で失敗することはない!と思っています。

 

いつも予想を外しているけど、これは自信あり!!

 

……ただ安全性が確認されるだけでは真の成功とはいえるかどうかは微妙なところ。

問題は次の段階に進めるか、もっといえばお金を出してでも進みたいと思う製薬企業が現れるか、です。

安全性試験と言えども、副次評価項目である「奏功割合」、または「RPN2の発現を抑制できるデータのようなものがとれるか」、に注目したいです。

 

これで有効性がありそうと示唆されれば、フェイズ2以降の製薬会社への導出が現実味を帯びてきます。

というのも、何度も言いますがTDM-812は治療抵抗性を持つRPN2遺伝子の発現を抑制し、がん細胞のアポトーシスを誘導するものです。

TDM-812単体でもがんの奏功が認められるなら、治療抵抗性を解除してやれば、既存の抗がん剤との併用でさらに大きな有効性が出るのでは?

既存の抗がん剤を販売している製薬企業との提携、なんてことを期待しちゃうのです。

作用機序が素人にも分かりやすいっていうのは結構重要なポイントだと思っています。

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TDM-812が対象とする市場規模は?

パイプラインの価値を評価するのに、市場規模は外せないところ。

トリプルネガティブ乳がんは20万人程度と推定される乳がん患者の内、10~15%と言われています。

だけど当然のことながらTDM-812の薬価がどうなるかは分かりません。

 

他に何か参考になるデータがないかなぁと探していると、富士経済が2013年に発表した調査結果がありました。

国内の抗がん剤のうち、乳がん向けの抗がん剤は1,000億を超える大きなマーケットとなっています。

2021年には約2,000億になると予想が。

【出典:富士経済 医療用医薬品の国内市場調査を実施

 

ザックリ計算にもほどがありますが、トリプルネガティブ乳がん向けの市場は200億~300億程度あると推計できます。

まぁ実際こんなもんじゃないでしょうか。

国内だけでも一定程度の市場規模はあることが分かりました。

 

それよりもRPN2は、別に乳がんだけに特異的に発生する遺伝子ではないので、他のがんにも適応は可能だと考えられます。

がんセンターもフェイズ1で「TDM-812」によって治療抵抗性の解除が示唆されれば、抗がん剤との併用による全身投与への適応拡大も検討したいとのこと。

場合によっては乳がんだけじゃなくて、他のがんでの開発の権利もまとめて導出することもありえるわけです(あくまでも可能性の話です。今の段階では「夢」のお話し……)。

というわけで全然注目されていませんが、個人的にはかなーり重要な治験だと考えています。

 

核酸医薬品の導出事例はこんな感じだ!

ちなみに、これまでに国内企業が絡む核酸医薬品の導出事例としては下記のようなものがありました。

・日本電工「ND‐L02‐s0201」

適応症:肝硬変及び肝硬変の前段階のNASH、C型肝炎に伴う肝線維症

契約内容:グローバル独占ライセンス契約

契約一時金:1億ドル(その他、マイルストーン、販売ロイヤリティ)

導出先:米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)

導出時期:日米欧での臨床第1相b/2相試験の中間結果が出てから

共同研究先:札幌医科大学

【参考:日本電工ニュースリリース2016

 

・リボミック「RBM004」

適応症:疼痛領域(痛み止め)

契約内容:グローバル独占ライセンス契約

契約一時金:3,000万円(マイルストーン含め3億。別に、出資金3億)

導出先:藤本製薬

導出時期:前臨床

【参考:四季報ONLINE

 

アルナイラム(米国)「ALN-RSV01

適応症:RSV感染症(呼吸器多核体ウイルス)

契約内容:日本・アジアにおける独占ライセンス契約

契約一時金:1500万ドル(その他、マイルストーン総額7800万ドル、販売ロイヤルティ10%)

導出先:協和発酵キリン

導出時期:フェイズ2実施中

*フェイズ2bで有意差を出せず失敗しました。

【参考:日経バイオテク

 

・ボナック「BNC-1021」

契約内容:日本における独占ライセンス契約(原薬を除く)

適応症:特発性肺線維症

契約一時金:不明

導出先:東レ

導出時期:前臨床

【参考:東レニュースリリース

 

まぁとんでもない大型契約からお小遣いレベルの契約までばっらばらであんまり参考になりませんね。

当たり前か。

別に「核酸医薬品だから」高く売れるわけじゃなくて、結局はその薬の有効性が大きいか、副作用が小さいか、患者数が多いか、どの程度のエリアをカバーするか、一言でいえば「成功しそうで売れそうか?」で契約金の額も決まってきます。

 

3Dマトリックスの場合は国内治験であることと、仮に成功したとしてもフェイズ1ということ。

トリプルネガティブ乳がんという、増えているとはいっても患者数が限定した病気なこともあって、どんなもんなんでしょ。

国内でトリプルネガティブ乳がん患者さんへの局所投与に限定した導出ならたいした金額にならないでしょうが、他の適応症の開発も含めてグローバルに導出するならそこそこいくかも。

 

これもまた現段階では夢の話ですが。

製薬会社もこの段階で大きなリスクは取れないと思うので。

もしかしたら導出せずに、マトちゃん主導の企業治験でフェイズ2に突入という選択もあるのかも。

いずれにしても、3DマトリックスのDDSはあらゆる核酸医薬品に応用できるので、TDM-812の導出もそうなんですが、DDS「A6K」の導出が実現するかに注目しています。

 

ちなみに、フェイズ2で失敗したアルナイラムの「ALN-RSV01」はマトちゃんのTDM-812と同様、局所投与。

安全性はほぼ証明されましたが、有効性でわずかに有意差を示せなかったそうな。

やっぱり治験は明けてみるまで結果は分かんないですね。

【参考:日経バイオテク

上の記事によるとアルナイラムの治験デザインの下手さを指摘しています。

マトちゃんもこの辺の下手さは止血材や後出血予防材で実証済みだ!

やっぱり、フェイズ2は自力でやらないで、どこかに導出してやってもらったほうが良いかも……。なんちって。

まとめ

・TDM-812のフェイズ1は2020年1月末終了予定!

・安全性試験は成功の可能性が高い!

・その後の導出活動に注目!

 

相変わらず3Dマトリックスは翌々期(2020年決算)に止血材販売だけで、売上53億、営業利益20億というトンデモ計画を立てています。

ちなみに今んところはこれっぽっちも信用してないです。

せめて売上半分の25億、利益トントンくらいいってほしいけど、これまでの流れから言ってそれも厳しいかな……。

今期5億くらい売上られれば、その水準達成もちょびっと見えてきそうなんですが。

 

本当に欧州・アジア(日本除く)止血材販売だけで20億の黒字をあげられるなら、今回紹介したTDMー812や他の後出血予防材や癒着防止材といったパイプラインの価値もあわせて時価総額2,000億くらいあってもおかしくないと思うぞ!

さすればyukiyukiさん、大金持ちに!

出来高も悲しいくらいに少ないですが、止血材の販売動向とともに812の治験結果及び導出にもひっそりと期待しております。

*投資は自己責任・余剰資金で!

【追記】2018年3月医師主導治験が終了しました! 症例数が足りず治験継続です。

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (5件)

  • yukiyukiさん、こんばんは。
    3DMに関する分かりやすいご説明、いつも本当に有難うございます。
    私も一応3DMのホルダーなので、トリプルネガティブ乳がん治療薬「TDM-812」という存在は聞いていましたが、yukiyukiさんの解説でよく理解できました。
    自己組織化ペプチドは、応用範囲がとても広いんですね。
    こういう話を伺うと(特に導出後のキャッシュイン)、やっぱり3DMを倦まずに持っておこうと思います。
    でも、3DMの株価は700円で動きませんね。なんでやろう?

    追伸:今日思い切ってサンバイオを買い増しし、200株株主になりました。

    • もぐらさん、いつもありがとうございます!

      全然株価は動きませんねえ。
      やっぱり良くも悪くも人気が無くなっているようです。
      止血材がある程度売れてこないと見向きもされないんじゃないかと思って半ばあきらめています……。
      ただ、おっしゃる通りアミノ酸の配列や濃度によって色々応用が効くところは自己組織化ペプチドの魅力だと思います!

      サンバイオはこの地合いのなかでも比較的検討してますね!
      サンバイオが22億の補助金をもらったように、3Dマトリックスも止血材が売れるという裏付けが取れれば1000円くらいは軽く突破すると思ってるんですが……。
      ちなみに僕自身、まだまだ本当に売れるのか半信半疑でいます。笑

  • こんばんは。
    yukiさんのブログを見てマトちゃんの魅力を再確認し、昨日100株追加購入して200株保有となりました(^^)
    余裕が無いのでコツコツ積み上げながらマトちゃん買い増して行く予定です!
    今日上げたみたいですが何の上げなんでしょうか…
    IRが出たとしても、結果に繋がるまでは上がらないだろうと思ってたんですが、ともあれ良い事ですね!
    材料と魅力だけは豊富なので、頑張る姿勢と結果を見せて欲しいですね(`・ω・´)

    • みいやさん、コメントありがとうございます!
      今日は珍しく上げましたねー!
      出来高も少ないので決算を見越した個人の期待買いが入ったんですかね。
      ただこれまでもマトちゃんは決算期待でじわじわ上がる⇒止血材全然売れず⇒暴落繰り返してましたから……。
      おっしゃる通り、まずは止血材の販売実績で信頼を取り戻してほしいと思います!

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