いつもお世話になっております。
バイオ株をいじっていると避けられないのが増資。
株券が新規発行されることで、既存株主が保有している株式価値が減少するいわゆる「希薄化」のため、通常株価は下がります。
では増資完了後の株価はどうなるのか!?
いくつか事例をまとめてみたいと思います。
MSワラントとは?
まず増資の方法は色々ありますが、バイオベンチャーが多用する手法として代表的なのがMSワラント。
MSワラントについてはワタクシが愛する3Dマトリックスさんが絶賛実施中です。
こちらの記事をご覧いただければどういうものか大体わかるでしょう。
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ポイントとしてはMSワラントは、権利行使価格が修正されるということ。
上記の3Dマトリックスの例では、権利行使のタイミングはマトちゃんがすることになっていますが、引受先が自分のタイミングで行使できる(新株を購入できる)場合もあります。
まことしやかに言われているのが、権利行使をする前に引受先が空売りを仕掛けて株価を強引に下げてくるという話。
基本的には引受先は長期保有する気はないので、どうすれば儲けられるかしか考えていません。
確かに空売りしてから権利行使をして返済に充当すれば、値下がり分とディスカウント分の利益がゲットできるから大儲けできるよなぁ。
この話の真偽は分かりませんが、いずれにしても増資が発表されると希薄化懸念が発生しますので、通常株価が低迷するのは一般的です。
んじゃあ増資が完了すれば株価は上がるのか?
増資が完了したら、少なくとも上記のような「空売り不安」リスクはなくなることになります。
では増資が完了したら株価は上がっていくんでしょうか。
あんまりそんな実感もないけど……。
増資するぞ!は突然来るけど(キャッシュ残高を考えればある程度予想はできるけど)、増資がいつ完了するかは権利行使状況が少なくとも毎月一回は発表されるので目途がつきます。
というわけで増資完了発表日と、それから一週間後と一か月後の株価をちょっと調べてみました。
*できるだけその間にIRが発生していない銘柄をいくつか抜き出してみました。
【アンジェス】
・第 28 回新株予約権(2016年10月3日行使完了)
・発行株式数:7,650,000株
・割当先:三田証券
日付 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 |
2016年10月3日 | 278 | 285 | 274 | 282 |
2016年10月4日 | 295 | 299 | 283 | 283 |
2016年10月11日 | 273 | 276 | 266 | 266 |
2016年11月4日 | 245 | 247 | 238 | 241 |
増資といえばこの会社。
アンジェスさんから。
今年の増資については、コラテジェン承認申請の思惑もあって株価は乱高下しましたので、あんまり参考にならないと思って2016年の例を見てみました。
行使完了発表があった翌日は上がりましたが、終値は結局前日から+1円という結果に。
1週間後、1か月後ともに株価は下がっています。
【メドレックス】
・第8回新株予約権(2016年4月12日行使完了)
・発行株式数:1,600,000株
・割当先:Evolution Bio tech Fund
日付 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 |
2016年4月12日 | 900 | 908 | 800 | 833 |
2016年4月13日 | 848 | 887 | 810 | 855 |
2016年4月20日 | 1,071 | 1,146 | 1,020 | 1,146 |
2016年5月12日 | 1,241 | 1,267 | 1,120 | 1,168 |
メドレックスの大型増資。
発表翌日はプラスでスタートしましたが、前日に大きく下げていたので自然反発なような気も。
この日なにかあったのかな。地合いが悪かっただけか?
株価はその後はじわじわと上げていきます。
ただこれは増資が完了したからというよりも、最重要パイプラインだった消炎鎮痛剤エトリートのフェイズ3結果期待によるものかと。
ちなみにちょうどこの5月12日の引け後にエトリートの治験失敗を発表。
当然、5月13日は大幅安となりました。
【ラクオリア創薬】
・使価額修正条項付き第11回新株予約権(2015年11月27日行使完了)
・発行株式数:3,000,000株
・割当先:ルリンチ日本証券
日付 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 |
2015年11月27日 | 406 | 410 | 400 | 400 |
2015年11月30日 | 406 | 406 | 394 | 396 |
2015年12月4日 | 386 | 390 | 383 | 385 |
2015年12月25日 | 327 | 327 | 316 | 318 |
今をトキメク銘柄であるラクオリアさん。
こんなに株価が安いときもあったんだなぁ。
やはり行使完了日の翌営業日はちょびっと上げて始まりましたが、その後はどんどん下げていきます。
うーむ。
やっぱり増資そのものが「完了」したところで、株価にはあんまり関係なさそうだな……。
イメージ的には上値が軽くなるような気もしますが、そもそもそれは好材料が出た時の上値ですもんね。
念のため、こちらもMSワラントの常連、キャンバスさんの事例も見ておきます。
【キャンバス】
・第9回新株予約権(2015年1月22日行使完了)
・発行株式数:800,000株
・割当先:マイルストーン・キャピタル・マネジメント
日付 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 |
2015年1月22日 | 1,765 | 1,765 | 1,644 | 1664 |
2015年1月23日 | 1,720 | 1,801 | 1,665 | 1,700 |
2015年1月29日 | 1,841 | 1,841 | 1,750 | 1,750 |
2015年2月23日 | 1,681 | 1,710 | 1,639 | 1,665 |
キャンバスさんの事例。
増資完了日から5月まで特に好材料も悪材料も出ませんでした。
さて増資完了後のキャンバスさんの株価がどうなったかというと……。
増資完了以降、大幅高でスタートしました。
が、その後は上がったり下がったりを繰り返して、1か月後の終値は増資完了前とほぼ同じに。
これまた評価しにくい結果となりました。
まとめ
・増資完了自体が短期的な株価に与える影響はあんまりない
サンプル数は少ないですが、増資完了発表翌日の始値はいずれも高く始まりました。
ただその後の推移については、増資完了によって株価が上がるとか下がるとかいう傾向は見出せませんでした。
もちろん、あくまでも短期で見た場合。
増資完了後に良い材料がでたら、上値が軽くなるっていうことはあるのかもしれません。
なんのせあれですね。
バイオは特許にしても増資完了にしても、IR翌日に飛びつくのは危険って話です。
それでは最後までお読みいただきありがとうございました。
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