再生医療品の開発が加速しています。
2009年にジャパンティッシュエンジニアリングの自家培養表皮「ジェイス」が日本で初めて再生医療品として保険適用を受けてから現在まで、少しずつ上市品の数も増えてきました。
最近では「再生医療等新法」施工後、初めての認可品となったテルモの心不全治療用シート「ハートシート」も保険適用。
ただハートシートは1回の治療費が約1,500万と高額なことから賛否もあり……。
高齢化によって社会医療費が増大する中、薬価の問題はこれからも出てくると思います。
とはいえ、再生医療品の開発競争が止まることはなさそうです。
国もジェネリックの推進をするなど医療費削減に乗り出す一方、再生医療品の開発については思いっきり後押しをしています。
国内バイオベンチャーでも再生医療を事業の中核に据える企業が増加中。
その中の一つ、それが【7776】セルシードさんだ!
セルシードさんとはこんな会社!
セルシードは2001年創業の「細胞シート工学技術」を持つ会社です。
「価値ある、革新的な再生医療をリードし、世界の医療に貢献します」をミッションとして、創業以来、再生医療の基盤となる細胞シート技術の実用化に取り組んでいます。
世の中的には「細胞シート」及びそのシートを培養する「皿」を作ってる会社。
皿って書くとなんかショボいイメージですが、決してそんなことはなく。
というのも、細胞をシート状に培養してもそれを回収するのが難しい。
これまでは物理的に無理に剥がしてしまったり、酵素処理でバラバラに一度して取り出していたそうです。
だけどそれだと細胞に傷がついちゃうよね。
細胞ちゃん、とてもデリケート。
それがセルシードの皿を使えば、培養したシートをそのまま綺麗に剥がすことができちゃうんです。
具体的には、セルシードの培養皿の底は特殊なポリマーでコートされています。
このポリマー。
ヒトの体温と同じ37℃だと、細胞がピタッとくっ付くようになっています。
培養された細胞は、培養皿の底にくっ付いてシート状になります。
下の白いのがポリマーのイメージね。
37℃のときは縮んでるでしょ。
出典:セルシード ホームページ
んで、そのシートを取り出すにはどうするかというと、なんと単純に培養皿を冷やしてあげるだけでOK!
このポリマーは冷やすとピヨっと伸びる性質があります。
下の感じね。
出典:セルシード ホームページ
ピヨっと伸びてるでしょ?
こんな感じでシートが出来たら後は冷やせば、ポリマーが持ち上げるイメージでシートが簡単に剥がれてくれるわけ。
「へー( ´_ゝ`)」って感じですが、本当にすごい技術らしいよ。
実際、テルモの心筋シート「ハートシート」の製造にも、セルシードの特注「培養皿」が採用されました。
ハートシートが売れれば売れるほど必然的に培養皿も売れます。
ただ、テルモのハートシートは再生医療品等早期承認制度を活用した条件及び期限付き承認ですので、使用は虚血性心疾患による重症心不全の患者さんに限定されています。
このためハートシートの上市だけでセルシードの業績が一変するものではないですが、シート工学技術の高さは証明されたかと思います。
【セルシード】
代表取締役社長:橋本 せつ子
設立:2001年(平成13年)5月
上場:ジャスダック 取引コード「7776」
ミッション:価値ある、革新的な再生医療をリードし、世界の医療に貢献します。
ビジョン:細胞シートビジネスプラットフォームを確立して、最良の製品を世界に届けます。
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食道再生上皮シートと膝の軟骨の再生シートに経営資源を集中!
現在のところ収益は培養皿の販売が主となっています。
研究者向けの販売がほとんどですので、これだけで黒字化するのは無理な状況。
2016年決算では売上はわずか5,000万程度に留まっています。
大学の研究費削減の動きもあり、15年の8,000万から大きく減少した格好です。
セルシードは海外展開なども積極的に行いたいとしていますが、大幅な増加はやはり難しいでしょう。
そのため会社としては今後の展開として、自社の細胞医療製品の開発に取り組んでいきたいとしています。
目下、進めているのが食道再生上皮シートと軟骨再生シートです。
・食道再生上皮シート
日本の食道がんと診断される患者は毎年約22,000人。
男性がかかりやすいがんとなっています(発生率は女性の約5倍)。
現在のところ、食道がんに特異的な抗がん剤というものはないため、治療の第一選択は外科手術となります。
つまり胸を開いて、食道を切除して、喉と胃を繋ぐという患者にとっては負担の多い手術です。
数年前から国立がん研究センターで内視鏡を使ったがん切除術(ESD)が開発され、現在では食道がん患者の2割は内視鏡手術を受けています。
ただ、この場合は傷が治るときに瘢痕化・狭窄が起こるリスクがあるという問題も。
そこでセルシードが開発しているのが食道再生上皮シート。
患者さんの口の粘膜から採取した細胞をセルシードの「培養皿」で培養し、このシートを傷口に移植します。
移植されたシートは速やかに幹部に生着。
これによって食道の狭窄を防ぐことができます。
ただ、デメリットもあり。
シートは非常に薄いので内視鏡でのハンドリングがすごく難しい。
そこでセルシードは専用のデバイス(道具)も開発。
手順としてはボートのような形をした輸送器具にシートを取り付けて内視鏡を通して患部まで持っていきます。
そして患部まで来たときに空気を入れることで、シートを風船のように膨らませるのです。
風船上になったシートを患部を覆うようにピタッと接着させるイメージです。
これによって、どんなお医者さんでも簡単にシートを患部に貼り付けられることが可能になります。
この食道再生上皮シート。
東京女子医大をはじめとする3つの機関で30例の臨床実績を積んでおり非常に有望な結果が得られたそう。
この臨床結果によって、厚生労働省からは「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されました。
この制度は画期的な医療製品について、優先的に審査・相談に応じるよというもの。
厚生労働省からは、「食道再生上皮シート」の上市のための治験については、一般的な新薬のようにフェイズ1、2、3という段階を踏むことなく、「追加で9例の治験をするだけでOKだよ!」というゴーサインももらうことができ、日本では2016年4月に治験届を提出。
2016年夏に治験を開始(がんセンターと東京女子医科大)しました。
2019年中の販売承認取得を目標としています。
非常に速やかな展開!!
スウェーデンでも上市に向けて2016年欧州医薬品庁EMAと治験プロトコルについて協議を進めている段階です。
【追記】EMAと協議をしてきたセルシードですが、想定よりも大規模な治験を求められたようで、治験に向けた進捗は一旦止まっている状況です。
なお、テルモの「ハートシート」は保険適用されましたが、治療に要するシート代(5枚分)は計1,470万円。
めちゃくちゃ高い……。
食道再生上皮シートの薬価設定がどうなるかは分かりませんが、ハートシート同様に患者本人の細胞を培養してシートにしないといけないので、かなり高額になることは予想できます。
セルシードの細胞シートは市場性もニーズも十分だと思いますが、価格面や使いやすさ、あとはそれに見合うだけの有効性を示すことができるか。
治験の結果に注目されます。
・軟骨の再生シート
東海大学整形外科の佐藤正人教授と共同研究している軟骨の再生シートです。
患者さん自身の健全な部分の軟骨を採取し、培養。シート状にします。
このシートを3枚作って、軟骨がすり減った部分に移植をするとサイトカインという物質が分泌。
組織の修復が促されます。
2011年から始めた自己細胞シート移植は8例移植が完了し、その後3年以上経過しましたが、いずれも経過は良好とのこと。
この結果を受け、自己細胞シートを用いた関節軟骨治療を先進医療B(これに認定されれば保険はきかないけど混合診療として受けることができるようになります)として申請し、将来的にセルシード主導による治験を目指しています。
ただこちらも自己細胞のため、コストがバカ高いです。
そこで佐藤先生は他人の細胞を使ってより多くのシートを作るという研究も進めています。
6本の指が生えてくる「多指症」という赤ちゃんの1本切除した指から細胞をとって培養し、シートにする方法です。
これでコストも下げられます。
ヒト由来のため感染リスクはゼロにできませんが。
軟骨再生シートは現在、日本においてはPMDAと薬事戦略相談を実施中。
まとまり次第、治験に入っていく計画となっています。
【追記】東海大学は、まずは「先進医療」の申請を行って、臨床データを蓄積する戦略を採用した模様です!
・次期品目開発
個人的にもっとも期待している次期開発パイプラインが歯周組織再生シートです。
歯医者にいつも注意されるんですが、変に潔癖で小さいころから歯をガシガシ磨く癖がぬけずに歯茎が退縮してきてるような気が。
歯周病とかも怖いし、これはぜひとも実用化してほしい。
治療費数100万とかだったら貧乏人のワタクシは受けられないけど……。
細胞を培養⇒組織に生着って治療法は効果は高そうだけどコスト面が課題ですね。
マトちゃんの自己組織化ペプチドのほうが、今んところ幅広く商業ベースに乗っていきそうな気はしてるんですが。
中期経営計画
セルシードさんの今後の計画です。
以下な感じ。
基本的にはここ数年は培養皿の販売で売上を伸ばしていこうとする計画。
また自社の「細胞工学」技術の海外展開も積極的に図っていくとしています(海外提携一時金については計画に盛り込まず)。
台湾のメタテック社への細胞シート再生医療事業に関する台湾での独占的事業化権付与にも成功したので、このまま波に乗っていってほしいな。
ただ黒字化までにはまだまだ時間が掛かります。
自社パイプラインである食道再生上皮シートや軟骨再生シートの上市は必須条件ですが、条件付きの承認だけでは固定費を回収できるほど売れないような気がする。
ただそこまでいけば海外での引き合いも強くなるでしょうし、なんといっても現時点で時価総額が50億超くらいなので、何かの拍子で「火が付けば」2倍3倍くらいは軽く行っちゃいそうな気もします。
【追記】セルシードが新中期経営計画を発表しました! 黒字化計画です。
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今のところの自社パイプラインの今後の予定は下記となります。
【食道上皮再生シート】
2017年治験進行中 2018年に販売承認申請 31年販売承認取得
【軟骨再生シート】
2017年4Q頃治験開始 30~31年治験進行
直近で一番跳ねそうな材料としては食道再生上皮シートの承認申請。
治験に成功してここまで持っていけるかですね。
女子医大の結果や政府の再生医療への力の入れ具合からすると成功しそうな気がしますが、食道再生上皮シートの「業績」期待で長く持ちすぎるといつかガツーンと下がっちゃうときが来るようにも思えまして……。
緑内障治療薬のグラナテックの承認取得で暴騰して、だけど実際は「そんなに売れないんじゃね?」不安で株価が戻っちゃったDWTIは本当に多くのことを教えてくれたよなぁ……。
まとめ
・セルシードさんは細胞シートの「培養皿」を作っているぞ
・自社製品の食道再生上皮シートが日本の2019年に条件付きで承認されるかもだぞ
・だけどどれだけ売上に寄与するかは未知数だぞ
2006年には6億の投資をして細胞培養施設を建設しました。
培養皿についても現在3種類の製品を持っていますが、新たな製品開発に取り組んでいきたいと意欲的。
STAP細胞ニュースで株価が跳ねた、怪しさ満点なところもセルシードさんのかわいげのあるところです(嫌味じゃないよ)。
時価総額的にはかなりお手頃なので、再生医療関連の銘柄で安いところを買いたいって人には良いかもです。
ただ細胞シートって何気に競合が激しいからなぁ。。
値段の問題もあるし。
培養皿の売上が落ちているのも気になります。
会社側は大学等の研究費削減を理由として挙げていますが、いやらしい見方をするならば他社製品にとって変わられたってことはないのかなぁ?ってことも思ったり。
ただ台湾での独占権付与には成功したので、やっぱりそこそこの競争力はある技術なんでしょう。
海外展開を進展させ、日本発の「培養皿」をガンガン売り込んでくれることを期待しています。
頑張れセルシードさん!
*本記事はド素人が記載していますので、誤りがあればご指摘を。また投資は自己責任・余剰資金でお願いいたします。
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