いつもお世話になっております!
最近HMT(ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ)をちょこちょこ打診買いしているぞ。
時価総額はまだ120億。
長期で見ればかなり魅力的だと思うんだけど、どうなるかなぁ。
*以下の記事は文系ど素人野郎が書いたものなので、誤りがあればご指摘を……_(._.)_
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HMTさんのビジネスモデルはザックリこんな感じ。
HMTは2本柱で事業を進めていまして、1本目のメタボローム解析事業でお金を稼いで、そのお金をリスクは高いけど成功したときのリターンもバカでかいバイオマーカー事業に回しています。
◎メタボローム解析事業
⇒代謝物を測定することでお金をもらう事業です。
製薬企業などから「Aって病気の人と健康な人の代謝物を測定してくれや。なんか代謝物に違いがあるのか知りてえからさ」って血とか尿とか細胞を渡されて、「あいよー」ってやってあげる事業。
違いあれば、その代謝物を増やしたり減らしたりできるお薬づくりなどに活かすわけですね。
最近では食品会社からの依頼も増えています。
2015年、科学的根拠があれば商品に具体的な効能を表示(おなかの調子を整えるとかっていうやつ)することができる「機能性表示制度」が創設されました。
消費者の健康志向も高まる中、自社商品の付加価値向上のためにHMTに分析を依頼する会社も増えています。
菅野社長はこの流れを「神風」って言っていて、今後も二桁%の売上の伸びを見込んでいるぞ。
2017年3月期は、このメタボローム解析事業で売上が約9億円、営業利益5億円を上げていまっす。
◎バイオマーカー事業
⇒メタボローム解析事業によってAという病気の人固有の代謝物が分かったとすれば、今度はこの代謝物を使って診断や創薬に使うのがバイオマーカー事業。
健康診断で血液検査とかしますよね。
「血糖値が高いから精密検査受けろや」っていうあれ。
血糖値とかは分かりやすいけど、まだまだ世の中には、代謝物と病気との因果関係が分かってないものがたくさんあるので、そいつを発見して世の中に普及させていく事業です。
普及させていく段階でチャリンチャリンとお金が入ってきます。
例えばHMTが現在注力しているのがうつ病。
うつ病患者は健常者と比べてPEAという代謝物が少ない(らしい)ってことをHMTが発見しました。
その代謝物の診断キットをお医者さんに販売したり、「血だけ送ってくれればこっちで検査して結果を送ってあげるよ」って感じで収益を上げていこうとしています。
なお、このうつ病診断法はまだ実用化には至っていませんので赤字だよ。
2017年3月期、バイオマーカー事業は売上がほぼゼロ円、営業利益約マイナス2億円でした。
2018年の予定は下記のとおりです。
出典:HMT 2017年3月期 決算説明資料
というわけで、バイオマーカー事業を止めちゃえば黒字になるんですが、菅野社長もキミたちのことはちゃんと理解しているよ。
強欲なキミたちのことをさ!
「メタボローム解析事業で小金持ちになっても投資家は好きになってくれないじゃん。かといって、赤字垂れ流しバイオも嫌だろうから、黒字ベースは保ちつつも夢も追っていくぜ。安心感と夢を両立する会社ってすごいっしょ?」
的なことを言ってます。
キミたちの心をトコトンくすぐってくるねー。
HMTのうつ病診断法の精度は!?
というわけで。
株価が大化けするにはバイオマーカー事業が成功するのが大前提。
だけど!!
HMTのうつ病診断法は果たしてホンモノなのか?
当たり前ですが、HMTの診断法がお国から承認されて保険適用されないとHMTにビッグマニーは入ってきません。
先日HMTより発表されたお知らせを見てみましょう。
日本精神神経学会の学術雑誌「Psychiatry and Clinical Neurosciences」に、HMTと川村総合診療院の川村則行先生と共同で実施された臨床結果が掲載されたぞっていうお知らせ。
大うつ病性障害(MDD)患者さんと、健常者の血液成分を分析した場合、患者さんではPEAというバイオマーカーが有意に低下していたとのことです。
今回の対象者数はMDD患者さん34名と健常者さん43名。
HMTが新規開発した独自の検出法でPEA濃度を測定し、比較しました。
その結果は……
受信者操作特性曲線(ROC)における曲線下面積(以下、AUC)は0.92となり、高い判別性能を示しました。また、1.46µmを閾値としたときの感度は88.1%、特異度は88.6%でした。
これもう訳わかめすぎて、文系ど底辺サラリーマンにしたら「日本語でお願いします」レベルのなんですが、ザックリとした理解でいうと以下のような感じでしょうか。誤りがあればご指摘を。
まずうつ病患者さんのPEAが低かったっていいますが、どこからが低くて、どこからが高いかって「境目」を決める必要があります。
それが閾値。
今回の場合は、1.46µmを閾値としてあります。
で、PEAの値が1.46µmより高いと健常者、1.46µmより低いとうつ病患者として振り分けました。
その結果はと言いますと。
川村先生の診断と照らし合わせたところ、感度(うつ病の人がうつ病と診断される確率)が88.1%、特異度(うつ病じゃない人がうつ病じゃないって診断される確率)が88.6%だったとのことです。
ちなみに先進医療として承認を受けているうつ病の客観的な診断法としては「光トポグラフィー検査」があります。
その臨床結果が下記。
一番左側の数字が閾値です。
この数字と比較すると、HMTの診断法のほうが優れているように思えます。
ただし、HMTのほうは健常者と「大うつ病性障害患者」を対象としたものである一方、光トポグラフィー検査は精神疾患患者全体(大うつ病、統合失調症、双極性障害)を対象としたものなので、単純な比較はできませんのでご注意を。
ちなみにAUCというのは分類の性能の良さを表しています。
0~1までで、0.5は完全にランダム(患者も健常者も差が全然ない丁か半か状態)。
鑑別能力が高く、完全にうつ病患者と健常者を診断できたときはAUCは1となります。
0.92というと良い数字っぽい。
一般的にはAUCの値の評価は、下記のように判断できるそうな。
AUC 0.9-1.0 | かなり高精度だぞ! |
AUC 0.7-0.9 | そこそこの精度だぞ! |
AUC 0.5-0.7 | あんまあきまへんな |
やはり0.92はかなり高いですね。
ちなみに先の光トポグラフィーの論文ではAUC=0.75という数字がみえます。
というわけで、HMTのPEA濃度による診断法はひとまず高結果だったことが分かります。
下のグラフはさらに分かりやすい。
出典:HMT 2018年3月期 決算説明資料
治療をしていくにつれて、患者の抑うつ度は低下するとともに、PEA濃度は高まっていっています。
つまりHMTの診断法は、うつ病の客観的な診断に用いられるだけじゃなく、うつ病の治り具合もチェックできるってところ。
言葉は悪いですが、もうとっくに治っちゃってんのにお医者さんが自身の経験だけに頼って薬を出し続けちゃう事態を避けることにも繋がりますよね。
そうなれば国の医療費も抑えられるので良いことづくめ。
HMTでは、今のところ一人当たり5回程度の診断を受けると想定しています。
今後、超えるべき壁は!?
いくらHMTのうつ病診断法が高い精度を誇っていたとしても、コストがくっそ高ければ意味がありません。
しかーし。
この課題はすでにクリアされています。
東洋紡と共同研究を行い、うつ病バイオマーカー測定に必要となる酵素の量産技術を確立。
これで多くの病院、お医者さんが簡単に低コストでこの検査を行うことができます。
精神科だけじゃないですよ。
内科でだって「最近体調悪いよー」って人の血液検査をして「お、PEAが低いから心療内科を紹介しようか?」なんて使われ方もあり得るわけで。
【追記 2018/7/9】HMTは2018年3月期決算説明会で、より早期の承認のために一般のメンタルクリニックや心療内科で測定が行えるPOCT機器は後回しにすると発表しました。
さあ、あとは薬事承認・保険適用、もっといえば法定健康診断への組み入れへと突き進むだけだ!!!
とはいえ、まだまだハードルは残されている。
【1つ目のハードル】大規模な臨床試験でも良い結果がでるのか?
いきなり高いハードルだと思うぞ。
そもそも本当にPEAはうつ病に関係していると言っちゃってええのか?
なぜなら上記の診断結果ですが、川村先生と一緒に行ったもの。
現在はうつ病の診断が医師の主観に左右されています。
ってことは当たり前ですが、今回の結果も限られた医師によって診断された「うつ病患者」と「健常者」のPEAを比較しただけです。
この結果だけで「こりゃ承認間違いなし!」っていうのは尚早だとド素人のワタクシでも思うわけで。
HMTは、研究試薬として2018年3月期中には検査キットを販売する予定としています。
幅広く臨床の現場で使ってもらって、どういう反応が出てくるのか注目です。
たっくさんのお医者さんの診断とも矛盾のない結果が出てこれば、HMTのバイオマーカー技術の評価も大きく高まるでしょう。
合わせて国内の大学病院と臨床試験に向けた準備を進めていくとしています。
【2つ目のハードル】簡単にお国が承認してくれるのか?
これまでにない画期的な診断法だからこそ、国から求められる臨床試験がどういうものになるのかが予想できません。
前例がなければないほど、慎重になっちゃうような気が。
とてつもなく難易度の高い治験デザインを要求されたり、交渉に時間がかかったり、成功したとしても審査に時間がかかったり……ってのは十分あり得るんじゃないでしょうか。
国も働き方改革やメンタルヘルス対策に乗り出すなど、注目されている分野だとは思いますが、かといって薬事承認のプロセスがスムーズに進むかどうかは別問題だと考えています。
ある意味、HMTにはコントロール不能なので、ハードルを越えるっていうか、ハードルの高さがケインコスギにとっての跳び箱15段くらいにおさまってくれることを祈るだけです。
【3つ目のハードル】うつ病へのネガティブ風潮の壁を越えられるか?
会社が掲げる2029年に売上高1,050億という目標。
ちょっとあり得ない打ち上げ花火的な金額ですが、かりに法定健康診断にHMTのうつ病診断が取り入れられるなんてことが起きたら、とんでもないことになるでしょう。
ただしこれこそ相当ハードルは高いと思う。
やっぱりうつ病の人は仮に病院に行っていたとしても、なかなか公言できないもんね。
ストレスチェックにしたところで、会社からの無言の圧力によってテキトーにポジ回答に〇を付けている人も多いでしょう。
だからこそ客観的なうつ病診断法は意義があるわけですが、一方で明るみに出ることを良しとしない風潮があることも否定できない。
さらに100%の診断法ではないからこそ、うつ病じゃない人がうつ病として判定されたときのインパクトは強烈です。
「精神科に行ってお医者さんに診断してもらったら、PEAは低かったけどうつ病じゃなかったです!」って言っても、周囲からは腫れもの対象とされてしまう危険性もあります。
うつ病患者からも、うつ病患者じゃない人からも反発がきそう。
なので、健康診断への組み入れについては個人的には賛成なんですが、現実的には難しいんじゃないかなぁと思っている次第。
過度な期待はせずに、ひとまず承認・保険適用を全力で目指してほしいと思います。
まとめ
・HMTは安心と夢を兼ね備えたバイオベンチャー!
・うつ病診断法が承認されるまでに、まだまだハードルは残されているぞ!
とりあえず、HMTのうつ病診断が承認されるにはまだまだ時間がかかりそうなので、短期で稼ぎたい人にはおススメしないぞ。
だけど長期で見ればカナーリ面白い銘柄だと思っています。
メタボローム解析事業で得たお金を、リスクの高いバイオマーカー事業に回していくビジネスモデルはナイス!
メタボローム解析自体は今後も安定して伸びていくでしょう!
大学院生などを対象としたメタボロミクス研究助成事業なんかも何気におもしろいし、とても意義のあること!
うつ病はうまくいくかどうかまだまだ半信半疑だけど、バイオマーカー探索の技術自体はホンモノの可能性が高いはず!
社長もナイスキャラ!(これ結構重要!)
情報発信もちゃんとやってくれてる!
うん。ワタクシからの愛を提供するに値する銘柄だ。
ちなみに社長はうつ病はあくまでも「たまご」で、HMTのバイオマーカーの技術は「にわとり」だとしています。
うつ病診断法が「金のたまご」であることを実証したら、じゃんじゃか次の金のたまごを生み出していくぞと意欲的。
……こんな買い煽りイラストまで。
出典:HMT 2018年3月期 決算説明資料
どうせならたまごの色も金にすればよかったのにな。
さすがにそこまではやりすぎだと思ったのかなんなのか……。
もちろん、株を買うならうつ病診断法が「割れたたまご」になることも考慮すべきですよ!!
*何度も言いますが、僕はド下手くそなので投資は自己責任で! 誤りなどあればご指摘ください。
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