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MSSO(MSワラント)は悪魔の錬金術?株価への影響を事例から見る!

いつもお世話になっております。

バイオ株をいじっていると避けられないのが増資。

株券が新規発行されることで、既存株主が保有している株式価値が減少するいわゆる「希薄化」のため、通常株価は下がります。

 

では増資が発表されたら一旦「売る」が正しいのか?

それとも我慢をして飛躍の時を待つのが正しいのか?

いくつか事例をまとめてみたいと思います。

 

増資といっても種類がありますので、今回はバイオベンチャーが多用するMSSO(MSワラント)を発表したケースを取り上げました。

このMSSO。

悪魔の錬金術ともいわれ、既存株主への悪影響が特に多い(株価が下がる)と言われる手法です。

*MSSOの概要については下記の記事を参照。

[kanren postid=”5726″]

 

株をどれくらいの期間保有するかの時間軸は人それぞれ。

なので、増資発表からMSSO完了日までの株価を記載しています。

 

特にMSSOの場合、下限行使価格付近まで下げてくるという恐ろしい噂も。

マジっすか。

さっそく見ていくぞ!

*誤りがあればご指摘いただければ幸いです。

 

【アンジェス】

・行使価額修正条項付き第28回新株予約権(2016年8月5日発表)

・割当日:2016年8月22日

・行使完了日:2016年10月3日

・希薄化率:12.15%

・下限行使価額:185円

・割当先:三田証券

日付 始値 高値 安値 終値
2016年8月5日
(発表日)
323 342 310 310
2016年8月8日
(発表翌日)
302 312 295 300
2016年8月22日
(割当日)
301 301 296 299
2016年9月16日
(最安値日)
224 225 218 223
2016年10月3日
(行使完了日)
278 285 274 282

増資発表から増資完了日間の最安値:218円

 

一部では増資の天才企業と不名誉な称号まで得ているアンジェスさん。

増資発表日の翌日は予想に反して大して下がりませんでした。

……が、その後はズルズルと値を下げていきます。

 

増資期間中の最安値は218円。

 

増資発表前の株価から約30%もダウン。

希薄化率12.15%を大きく上回る強烈な下げ。

うーん。

さすがは悪魔の錬金術。

 

【メドレックス】

・行使価額修正条項付き/コミット・イシュー 2016モデル 第8回新株予約権(2015年11月20日発表)

・割当日:2015年12月7日

・行使完了日:2016年4月12日

・希薄化率:23.9%

・下限行使価額:463円

・割当先:Evolution Bio tech Fund

日付 始値 高値 安値 終値
2015年11月20日
(発表日)
762 783 762 777
2015年11月24日
(発表翌営業日)
717 745 707 737
2015年12月7日
(割当日)
707 707 667 685
2016年2月12日
(最安値日)
370 393 341 341
2016年4月13日
(行使完了日)
848 887 810 855

増資発表から増資完了日間の最安値:341円

 

メドレックスの悶絶大型増資。

翌日は大きく下げてスタート(希薄化率から言えばそんなに下がらなかったともいえるかも)。

その後も下がり続け、最安値は341円。

なんと44%ものダウン。

 

しかーし。

3月25日にチザニジンテープの臨床開始IRを出してから株価は一挙に反転。

さらに助成金獲得IRなど、立て続けに材料を発表し、行使完了日には増資発表前をも上回る結果となりました。

頑張ったね、メドレックスさん。

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【ラクオリア創薬】

・行使価額修正条項付き第11回新株予約権(2015年8月26日発表)

・割当日:2015年9月14日

・行使完了日:2015年11月27日

・希薄化率:19.03%

・下限行使価額:278円

・割当先:メリルリンチ日本証券

日付 始値 高値 安値 終値
2015年8月26日
(発表日)
471 499 471 496
2015年8月27日
(発表翌日)
464 492 464 478
2015年9月14日
(割当日)
499 534 495 508
2015年11月13日
(最安値)
368 381 360 379
2015年11月27日
(行使完了日)
406 410 400 400

増資発表から増資完了日間の最安値:360円

 

これまた大きなラクオリアさんの増資。

しかし翌日は一時プラ転しそうになるくらい健闘します。

さらに割当日には増資発表前よりも上がるという力強さ。

 

……が。

 

その後は萎んでいきまして、最安値は360円。

やはり希薄化率を上回る27%ものダウン!

 

行使完了日の終値も増資発表前の終値と比べ、20%くらい下がっています。

希薄化率以上に下げてフィニッシュです。

やはりMSSOが発表されたら「一旦売る」のがセオリーなのか!?

 

【UMNファーマ】

・行使価額修正条項付き第20回新株予約権(2016年8月30日発表)

・割当日:2016年11月21日

・行使完了日:2017年3月23日(中止)

・希薄化率:15.7%(当初予定)

・下限行使価額:563円

・割当先:Evolution Biotech Fund

日付 始値 高値 安値 終値
2016年11月4日
(発表日)
1,103 1,105 1,062 1,077
2016年11月7日
(発表翌日)
957 999 930 985
2016年11月21日
(割当日)
1,003 1,137 997 1,037
2017年2月1日
(最安値日)
362 376 322 333
2017年3月23日
(予約権買取日)
345 349 336 342

増資発表から現在までの最安値:322円

 

途中で失敗したUMNファーマさんの増資。

この増資発表時は「インフルワクチン承認待ち」で、その後、期間中に「当局から否決」されました。

これによって株価は暴落。

下限行使価格を大幅に下回り、最終的には予約権を買い取って増資を断念します。

下落率はなんと70%!!

 

現在、塩野義との提携により株価は復活しましたが、この当時は本気で倒産するかもと思っていました……。

 

今思えばですが、下限行使価格を不自然なまでに低い値段にしてきています。

このときから増資失敗を見込んでいたんじゃないか、なんて思ったりね(結局はその下限行使価格さえ下回って増資失敗となったわけですが)。

 

【カイオムバイオサイエンス】

・行使価額修正条項付き第13回新株予約権(2016年8月30日発表)

・割当日:2016年9月15日

・行使完了日:まだ終わっていません(2017年11月25日現在)

・希薄化率:24.81%

・下限行使価額:312円

・割当先:メリルリンチ日本証券

日付 始値 高値 安値 終値
2016年8月30日
(発表日)
520 526 518 523
2016年8月31日
(発表翌日)
500 522 498 517
2016年9月15日
(割当日)
520 524 505 506
2017年9月8日
(最安値日)
369 372 358 360
2017年11月24日
(現時点)
380 381 374 380

増資発表から現在までの最安値:358円

 

大型増資の割には発表翌日もほとんど下げず。

割当日にも希薄化率の割には下がっていません。

しかしその後はズルズルと下げ、現在は目も当てられない状況。

まだ全ての行使が終わっていませんので、最下段の株価は現時点のものです。

現時点でも希薄化率以上の下げ幅。

31.5%ダウンです!

 

とりあえず厳しい状況。

僕らに夢を与えてくれたアドリブシステムとはなんだったんだ……。

 

【デ・ウエスタン・セラピテクス研究所】

・行使価額修正条項付き第9回新株予約権(2015年8月21日発表)

・割当日:2015年9月7日

・行使完了日:2017年2月8日

・希薄化率:14.92%

・下限行使価額:516円

・割当先:クレディ・スイス証券

日付 始値 高値 安値 終値
2015年8月20日
(発表日)
726 741 717 737
2015年8月21日
(発表翌日)
708 717 700 701
2015年9月7日
(割当日)
561 600 544 590
2016年2月12日
(最安値)
355 397 335 362
2017年2月8日
(行使完了日)
735 765 680 710

増資発表から増資完了日間の最安値:335円

 

目薬開発でお馴染み、DWTIさんの増資です。

こちらも発表翌日は5%程度の下げで踏みとどまりましたが、その後、割当日までガツンガツンと下がっていきます。

なんと割当日時点で既に希薄化率以上の20%の下げ。

 

強烈だぜ。

一時は下限行使価格を下回る335円を記録します。

増資発表前の株価から54.5%ダウン!

 

時がたち、行使完了まで約1年半。

株価は増資発表翌日の終値とほとんど変わらないくらいに。

今回の例でも、「増資発表後に一旦売って落ちたところで買いなおした人が勝利」という結果になりました。

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【GNI】

・行使価額修正条項付き行使許可条項付き第40回新株予約権(2017年4月21日発表)

・割当日:2017年5月8日

・行使完了日:2017年7月18日

・希薄化率:17.54%

・下限行使価額:340円

・割当先:モルガンスタンレーMUFG証券

日付 始値 高値 安値 終値
2017年4月21日
(発表日)
660 673 596 607
2017年4月24日
(発表翌日)
507 507 507 507
2017年4月25日
(発表翌々日)
481 532 467 505
2017年5月8日
(割当日)
465 526 458 514
2017年6月7日
(最安値日)
394 419 389 416
2017年7月18日
(行使完了日)
632 673 621 673

増資発表から増資完了日間の最安値:389円

 

増資の資金使途の一部はBABというアメリカの会社の買収資金に充てるとしたGNIさん。

増資に加えて、この子会社買収自体が疑問視されたことや、発表前に株価が大きく下げたことによる「GNIって情報漏れ漏れなんじゃねーか」不信もあって、翌営業日はなんとストップ安。

翌日の終値は505円となりました。

その後も株価は乱高下。

 

6月7日に最安値の389円を記録。

増資発表前から36%ダウンです。

 

ホルダーのストレスは半端なかったと思いますが、とりあえず行使完了日の終値は673円という結果になりました。

ストップ安になっても離さなかった人が報われる結果になってなにより。

 

あ、ちなみにこのとき、僕も300円台で買うことができました(増資発表時はまさか300円台まで落ちるとは思わなかったんだもん。僕勝利)。

 

【ブライトパスバイオ(旧グリーンペプタイド)】

・行使価額修正条項付き第9回新株予約権(2016年5月24日発表)

・割当日:2016年6月9日

・行使完了日:2017年2月27日

・希薄化率:17.00%

・下限行使価額:552円

・割当先:メリルリンチ日本証券

日付 始値 高値 安値 終値
2016年5月24日
(発表日)
915 936 841 841
2016年5月25日
(発表翌日)
781 990 755 916
2016年6月9日
(割当日)
1,199 1,244 1,073 1,121
2016年11月9日
(最安値日)
534 537 471 497
2017年2月27日
(行使完了日)
671 736 657 686

増資発表から増資完了日間の最安値:471円

 

ブライトパスがグリーンペプタイド時代にやったMSワラント。

翌日は7%の下げから始まりましたが、なんと終値は大きくプラスに。

その後も上がって割当日には4桁台に回復。

さらに一か月後でも、増資発表翌日の始り値よりも高値をキープしています。

 

しかしその後は急落。

割当日からちょうど5ヶ月後、471円を記録しました。

下限行使価格をも下回るなんて……。

増資発表前から44%ダウンです。

 

それから半年。

行使完了日の株価はといいますと、686円でした。

8ヵ月くらい掛けて増資を完了しましたが、その間、大きな材料は出せずに結局株価は低迷したことになります。

 

増資発表日翌日の寄りで買って、数日後に手放したイナゴさんが勝利。

さらには下限行使価格を割ったときに買ったイナゴ2さんが勝利という結果です。

 

ブライトパスのもう一個の事例。

・行使価額修正条項付き第13回新株予約権(2017年11月22日発表)

・希薄化率:12.00%(ITK-1が成功したら追加で3%)

・下限行使価額:432円

・割当先:クレディ・スイス証券

日付 始値 高値 安値 終値
2017年11月22日
(発表日)
715 719 686 698
2017年11月24日
(発表翌日)
648 687 644 667
2017年12月8日
(割当日)
644 672 638 655
2017年12月26日
(最安値日)
615 617 602 606
2017年1月26日
(行使完了日)
910 942 864 874

増資発表翌日は7%ダウンからスタート!

その日は一時、前日終値近くまで戻しますが、やはりその後はじり下げ。

約1ヵ月後の12月26日には602円を付けました。

 

増資発表前から13%ダウンです。

今回の増資は希薄化率15%ですが、そのうちの3%は前立腺がん用がんワクチンITK-1の治験に成功したらという条件付きです。

つまり当初の希薄化率は12%。

 

やはり若干ですが、希薄化率を上回る下げとなりました。

 

しかーし。

その後はグングンと値を上げて最後は増資発表前を大きく上回る水準でフィニッシュ!

素晴らしい。

やはりITK-1の治験結果期待が高まっているのでしょう。

絶対に500円台に落ちるだろうから、落ちてから買おうと思っていたワタクシ涙目。

 

目次

まとめ

・増資発表翌日は意外と下がらない。

・その後、希薄化率以上に下げる(それも大幅に)

【追記】ブライトパスさんが「大幅に下げる」っていうセオリーを破ってくれました!!

・行使完了日の株価が増資発表翌日の株価よりも高いか低いかは、その株次第。

 

傾向としては、増資発表翌日の株価はそこまで下がらず(むしろ数日後にはプラスになることもある)、だけどその後は希薄化率以上に下げる⇒それからは各社の材料次第って感じ……。

 

リスクを取りたくないなら、増資発表から時間が経たないどこかで一旦売るのが正しいかもです。

 

もちろん、全ての事例を拾ったわけではないので、あくまでも参考程度に。

知らないだけでMSSOを実施した企業でも、行使完了日まで株価が右肩上がりだったケースもあるのかもしれません。

株に絶対はありませんので、上記の事例も参考にしながら、個別企業の「資金使途」や「直近の材料」、「希薄化率」、「下限行使価格」などを基に売買の判断をすることになりそうです。

 

いやー、しかし……。

一時的であったとしても、「全部」が希薄化率以上に下げているとは思わなかった……。

確かに株価は希薄化しますが、そのかわり現金がゲットできるので会社の財務体質は良化します。

なので希薄化率までは下がんないのがフツーと思ってたんだけど、余裕でブチ下がってましたね。

 

なんとなく、最近ってMSSOが発表されてもそこまで下がらないイメージがあったんですが、完全に間違ったイメージだった。

MSSOの恐ろしさを改めて痛感した次第です。

それでは最後までお読みいただきありがとうございました。

[kanren postid=”4532″]

この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (4件)

  • 風太です。いつも勉強させていただいております。
    MSワラントの株価への影響についての分析、たいへん参考になりました。
    私、カルナバイオの増資による株価下落で、現在、かなりの含み損を抱えています。
    他の銘柄で利益が出ても、ほとんどカルナの損失補填で消えていきます。
    カルナの株価は、現在、最低行使価格を維持できない水準まで低下していますし、
    先月は行使がされていないようですね。
    株価よりも、カルナの手元資金の方が心配になります。
    一日も早い導出やマイル受領で株価が回復し、資金調達が無事済むことを祈るのみです。

    • 風太さん、いつもありがとうございます!
      あーカルナも増資中ですね。
      一度黒字化したときはこのまま安定した収益を上げていってくれると思っていましたが、予想以上に創薬支援の売上も伸びてこないし今は苦しいときかと思います。
      SRA141の臨床試験入りに入ることができれば、それがきっかけになって風向きが変わってくるんじゃないか、と思っているんですが……。
      早いところ行使ができるように、株価上昇の材料がほしいところですね。
      今後ともよろしくお願いいたします!

  • 増資のときは、増資が終わるまで株価を証券会社が支えていいようになってるので、増資発表直後はそんなに下げません。増資が完了し、証券会社の買い支えがなくなると一気に下げるのが通常のパターンです。確か、、、

    • 権兵衛さん、コメント誠にありがとうございます!

      それは公募増資のときの話じゃないですかね?
      MSワラントはむしろ割当先が空売りを仕掛けて行ってこいで2度儲けるって話もあるようで(僕自身はこの説には懐疑的なところもありますが…)。
      なので行使完了後は比較的株価は安定するイメージです。
      あくまでもイメージなので正確かは分かりませんが。。

      また勉強させてください!
      今後ともよろしくお願いたします!

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