いつもお世話になっております!
どうもワタクシです。
大注目をしておりましたグリーンペプタイド改め、6月29日からはブライトパス・バイオさんの癌ワクチンのフェイズ3。
こいつの1本目のフェイズ3の結果が出ました。
素人にはなんとも判断しにくい結果です。
これからのITK-1の行方が大いに注目されます。
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ITK-1の膠芽腫を対象としたフェイズ3の結果が発表!
ブライトパス・バイオ(何となく格好いいので、もうこの社名で笑)さんの最も進んでいるパイプラインであるITK-1。
こちらは、12種のがんと闘ってくれるペプチドの中から、投与前の患者さんの免疫検査によって、それぞれの患者さんに最も効くだろうっていう抗原ペプチドを選んで投与する「がんペプチドワクチン」です。
このITK-1はブライトパス・バイオさんのホームページによると、前立腺がんを対象にされていますが、実は医師主導治験として、久留米大が中心となり膠芽腫(脳腫瘍の一種で、最悪の悪性度と言われる腫瘍)患者を対象としたフェイズ3試験も実施されています。
なんでどっちもブライトパスがやんねーんだよ!って話ですが、結局のところ治験にはめちゃくちゃお金がかかるから。
つまり、上市した後に治験費用を回収できるだけのリターンを見込めないと、創薬企業はボランティアじゃないんで手を出さないんです。
ITK-1は幅広い癌に効果があるのでは?と期待されていますが、すべての癌に対して治験をやったら、会社がパンクしちゃいます。
いい方は悪いですが、会社としては「儲かりそうな癌治療薬」を優先的に開発するのは当然のこと。
前立腺がんは患者数も多いし、前臨床の段階でも最も効果が出そうながんだったので、承認の可能性も高ければ、実際に販売されたときにも大きな利益が得られると考えたわけ。
ただ、民間企業に任せきりだと、患者数が少ない領域は、いつになっても治療薬が開発されないことになります。
それはいくらなんでもマズいだろ。
そこで、製薬企業等が採算性の観点から本気を出しづらい領域は、大学の研究者や現場の医師が主導して治験を行い、新たな治療薬の開発を進めていくケースが見られます。
ITK-1の膠芽腫はまさにこれ。
膠芽腫は、希少疾病であり患者数が少ない癌。
そのため、ブライトパスさんではなく、久留米大学がんワクチンセンターが治験を実施し、この度結果が発表されたという次第です。
久留米大及びブライトパスの目論見としては、前立腺がんでITK-1の承認をゲットした後、膠芽腫でも久留米大の治験結果を使って適用拡大する戦略を掲げていましたが、果たして結果はいかに……。
気になる結果は!?
本日、久留米大はASCO(米国臨床腫瘍学会)にて、がんペプチドワクチンの膠芽腫患者への投与結果を発表しました。
【参考】テーラーメイド型がんペプチドワクチンのHLA-A24陽性のテモゾロミド治療抵抗性膠芽腫患者を対象とした第3相臨床試験結果をASCO(米国臨床腫瘍学会)にて発表
結果をまとめると、以下のようになりました。
・88例に対し、58例にがんワクチンを投与、30例に偽薬を投与。
・主要評価項目(この治験で最も明らかにしたい評価項目)は全生存期間(治療を開始した日から患者さんが生存した期間)。
・全生存期間において、がんワクチンと偽薬の間に統計学的有意差は示されず。
ということで、がんワクチンを投与した患者さんのほうが長生きできた(がんワクチンに有効性があった)、って結果は出ませんでした。
うーん残念。治験失敗です。これで膠芽腫患者を対象としたITK-1承認の芽はなくなりました。
……しかしながら、久留米大のコメントは自信に満ち溢れています。
「我々が示した結果は膠芽腫の患者さんにとって画期的な成績」とまで書いています。
この胸の張りようは、主要評価項目では有意差が出せなかったけど、副次的な評価(サブグループ解析)においては、有効性が証明されたから、とのこと。
詳しく書くと、予後不良因子を除いた患者さん52名(=全体の約6割で、本薬群:35名、偽薬群:17名)に対して再度解析したところ、癌ワクチンを投与した患者さんは、偽薬を投与した患者さんよりも長く生きて、1年間生きることができた患者さんも有意に多かったのです。
予後不良因子とは聞きなれない言葉ですが……
一口に膠芽腫といっても、この先急速に悪くなっていくだろう膠芽腫もあれば、比較的進行が緩やかであろう膠芽腫もあるんです。
予後不良因子は、治療をしてもあまり状態の改善がよろしくないと見込まれる因子。
ここで示されている膠芽腫の不良因子とは何なのかは明らかになっていませんが、例えば一般的に用いられるものとしては、下記のようなもの。
【追記】すいません。一つは12種のペプチドワクチンの一つでした↓
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年齢が高いとか、他に転移があるとか、神経症状が出ているとか、です。
ザックリいえばかなり病状が進行している患者さんとも言えます。
で、ITK-1は、膠芽腫の中でも「予後がそんなに悪くないと思うぞ!」って患者さんに対しては効果があったぞ、というわけ。
これに関しては割と予測できた結果です。
がんワクチンは、人間の免疫力を強化してがんを叩く治療法ですので、病状が急速に進む予後不良因子を持つ患者には、免疫力の高まりが間に合わないと考えられるから。
んじゃあ、予後不良因子を除く患者さんを対象として、ITK-1を投与できるように承認したればええやん。
と考えるわけですが、そう簡単に問屋は卸さん。
だってさ、サブグループ解析ってのは、悪い言い方をすれば後付けだから。
つまり……
最初に設定した主要評価項目を達成できなかったので、特定のグループに分けて再度解析をしました→特定のグループでは効果がありました。
ってことが審査当局に認められるんなら、なんだってありじゃん?ってことになるから。
つまり、
[voice icon=”https://yukiyuki13.net/wp-content/uploads/2017/05/cropped-logo.jpg” type=”l line”]「やべー! 失敗しちゃった。だけど強引にでも良い結果が出たことにしてやろう」[/voice]
ってな感じで、無理くり都合の良いデータだけを引っ張ってこれます。
大学生が卒論でよくやるパターン。
(ワタクシもやりました。都合の良い論文だけ引用をして、都合の悪いのは無視方式)
男性と女性で分けてみて、男性には効きましたってならなかなぁとか。
年齢でグループを分けて、若い人には効きましたってならないかなぁとか。
転移があるかないかで、グループを分けてみて、転移がない人には効きましたってならないかなぁとか。
つまり無数にグループ分けをして、単なる偶然かもしれない「良い結果」を抜き出した挙句、成功したぞ!って見せかけることができちゃったりもする。
なもんで、結論から言えば素人考えですが、通常は主要評価項目が達成できなければ、その治験は失敗とされる認識です。
……ただ、じゃあなんでこんな久留米大は自信満々、喜び燦燦なんだ。
例えばこんな主張も。
同じく長年、がん治療薬開発に取り組んでいるキャンバス。
キャンバスさんのホームページにこんな記事があります。
執筆者はキャンバスの役員、加登住眞氏。
その名も
これによると、
サブグループ解析というとどうしても「後解析」「苦し紛れ」という先入観で見られてしまいがちなのですが、実は、抗癌剤開発ではむしろ「常道」のひとつ
だそうな。
実際にサブグループ解析から承認まで持って行った「ゲフィニチブ(商品名:イレッサ。アストラゼネカ)」の事例にも触れられています。
もちろん、これはキャンバスの最重要パイプライン「CBP501」が、今回のITK-1と同様、主要評価項目は達成できなかったものの、サブ解析では有意差を示すことができたんで、「サブグループ解析だってスゲーんだぞ!」って強調したいって意味が多分にあるでしょう。
あと加登住眞氏は財務担当の役員ですので、この辺の専門家といえるかといったら、言えないわけで。
ただ、実際にゲフィニチブ(詳しくは調べてないんで分からないですが)の例もあるようなので、サブグループ解析が全く意味のない「こじつけ解析」とは見なされないのは確かなようです。
それに膠芽腫はオーファンドラッグ(希少疾病)。有効な治療法が確立されていませんので、一刻も早く有効な治療薬の登場が待ち望まれている疾病です。
そんな事情もあり、もしかしたら……なんて淡い期待も持っています。
多分、承認まで持っていくには、予後不良因子を持たない患者だけを対象に、再度の治験が必要となるような気がしますけどね。
それでも、「全然効果がなかった」わけではないので、ITK-1の前立腺がんへの治験の成功期待は高まったんじゃないかと考えています。
まとめ
・久留米大の治験は主要評価項目は達成できず。
・でも予後不良因子を持たない患者の生存期間は有意に伸長。
・基本的には失敗だが、後に続く前向き要素もある失敗。
こんな感じなんでしょうか。
でも、あまりにも自信たっぷり大成功な感じをプンプンさせる久留米大の発表はすごく気になります。
ワタクシは素人なので、詳しい方がいらっしゃったらぜひ教えてほしいです。
いずれにせよ、今後の株価は大いに注目されますね!
頑張れグリーン……じゃないブライトパスバイオさん!
【追記】ってなわけで、ブライトさんを買っちゃいました……↓
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