【書評】敬語で旅する四人の男【第7回小説宝石新人賞受賞作】

麻宮ゆり子著「敬語で旅する四人の男」

こんにちはyukiyukiです。

昔から小説は好きなんですが、最近老化の影響からか読んでも軒並み忘れていくので、この場を借りて感想を載せていこうと思います。

本日紹介させていただくのは、麻宮ゆり子さんの「敬語で旅する四人の男」です。

あらすじ (ネタバレあり)

【登場人物】
真島(29)律儀で真面目、振り回され上手なモラリスト
繁田(33)上昇志向が空回りする、女好きのバツイチ研究者
仲杉(28)チャラい言動で自爆しがち、人懐っこい営業マン
斎木(30)人の気持ちをはかるのが絶望的に不得意なイケメン

出典:単行本の帯より

表題作を含む連絡短編集。

表題作では真島が11年ぶりに行き別れた母に佐渡まで会いに行くことを、会社の先輩の斉木に話すと、自分も行くと言ったことから始まる。

ふたりっきりで佐渡デートなんてゲイだと思われないかと心配する真島に、斉木は大学の研究室に勤めていたときの先輩繁田と繁田の後輩仲杉を呼ぶ。

こうしてたいして仲良くもない4人で佐渡に行くことになる。全員親しいわけじゃない=お互い敬語で話すという設定がタイトルになっている。なるほど、うまい。

佐渡では砂金とり体験をやったり、一緒のホテルに泊まったり、ぎこちない関係ながら旅を楽しむ。

旅の途中では人とのコミュニケーションが絶望的に苦手な斎木さんがベッドや朝食への強いこだわりを見せ、その度、真島と仲杉はとまどうが繁田はそれが斎木君なんだと二人をなだめる。四人の心情がこうした旅のイベントを通して丁寧に描き出される。

旅のメインである真島君がお母さんに会いに行く日が来た。

母は古びた平屋の日本家屋に住んでいた。真島を呼ぶ声はしゃがれて低く、頭は丸坊主だった。

父は母と離婚してからしばらくして、酒の勢いを借りてお前の母は女の人に酒を出す店でお前の学費を稼いだんだと言われた。

久しぶりに会った母を前にして真島は思う。
なぜ母は二十歳そこそこで結婚なんてしたのか。本当は男なんて好きじゃないくせに。母のせいで女の人を警戒するようになったのに。そなんで結婚に夢が持てると思うか。

母は女の人と住んでいた。彼女はごゆっくりと真島に声をかけたが、彼はもう帰ると返した。彼女はもっとゆっくりしていってほしいと真島に言う。それでも真島は断った。

すると彼女は自作のピクルスを手に戻ってくる。これをお土産として持っていってほしいと。
「この人のピクルスはおいしいよ」真島の母が付け足した。

4人は帰りの船に乗り込む。母と、母と同棲をしている彼女が船着き場に立っていた。手を振っていた。

藪田さん仲杉さんは彼女のことを真島の母だと勘違いしているようだった。ただ斎木さんだけが「真島君は本当はお父さんに会いに来たんでしょ」と静かに真島に訊く。

似てるから、と。

真島はピクルスを斎木さんにあげた。斎木さんは「僕は漬け物は食べないからいらない」という。真島は「だったら斎木さんのお母さんに」と進めるが、斎木さんは「真島君は僕にって言ったから受け取れない」と譲らない。

ここでまた繁田さんが二人の間に入ってとりなしてくる。「真島君、これは斎木君のお母さんにあげてもいいですね」と念を押す。

その言葉に真島は繁田の気持ちに気付き、「斎木さんじゃなく、斎木さんのお母さんにあげてください」と言った。

「それならそうします。ありがとうございます」

斎木さんそう言って真島に向かって丁寧に頭を下げた。

船は島から遠ざかりその姿はもう見えなくなっている。

でも目を閉じるといつもそこに行けそうな気が真島にはするところで物語は終わります。

感想

それぞれが自分の想いを抱えて訪れた佐渡。心の中の傷はなくならないが、すくなくともしばらくの間だけは全てを忘れさせてくれる。

不思議な関係の四人の旅行は、適度に距離感があって、適度に無関心だからこそ、自分自身と向き合いながらも、他人の優しさも感じられる、そんな旅になったんだろう。

特にこだわりの強いちょっと風変わりな斎木さんが活きている。彼の存在が物語にとても厚みが出ている。

本作はエンタメ系の小説宝石新人賞の受賞作品だが、心理描写が非常にうまく、純文学にも近いように思えた。

調べると麻宮さんは宝石新人賞を取る前に、別名義で太宰治賞も受賞されていました。

太宰賞は純文学ですね。

純文もエンタメもどちらもいける器用な作家さんなんでしょう。

最後の真島と斎木さんのやり取りも良い。非常にさわやかな作品でした。

終わり。

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