最近はバイオベンチャーも積極的に情報公開を進めている企業が増えてきていますね!
世の中の流れとはいえ喜ばしい限り。
そんなバイオベンチャー企業の中でも群を抜いて丁寧な情報発信をしてくれている企業があるぞ。
バイオ銘柄の中でも屈指の低時価総額。
2019年6月期以降、売上が1億円未満だったら上場廃止になっちゃうリスクを保有。
バイオの中でも高リスクなその会社こそ、長年抗がん剤の自社開発を続けるキャンバスさんだ!!
*あくまでもど素人が書く記事なので誤りがあればご指摘を_(._.)_
【キャンバスさんの株価の推移】
キャンバスはこんな会社だ!
キャンバスは東証マザーズ上場の創薬ベンチャー企業です。
2000年の創業以来、新規抗がん剤の開発に取り組んでいます。
名古屋市立大学で抗がん剤の研究をしていた河邊現社長らの研究グループが、G2チェックポイントを壊す化合物の設計に成功したのが始まりです。
G2チェックポイントってど文系のワタクシには訳分からん単語ですが、なんのせヒトの細胞って損傷されたDNAがないかをチェックして、修復する機能があるんだって。
チェックって大事。バースデーカードの宛先を間違えたら「このハゲー!」って怒られちゃうからね。
細胞って偉いもんで、ミスを防止するためにダブルチェックをしてるんだ。
それぞれの段階をG1とG2と言います。
がんはG1のチェック機能がうまく働かないことで発生します。
ならば「G1のチェック機能を直せばよいじゃない!」って話なんですが、よくよく考えれば、G1のチェックを逃れてその後にがん細胞に変異したものは、G1を直したところで防げないよね。
もう変異しちゃってるんだから。
1枚目の壁を破られた後に、もう1回同じところに壁を作っても意味がないみたいなイメージ。
大げさに言うとギャグ漫画みたいな展開になってしまう……。
そこで河邊社長が注目したのがG2。
2回目のチェックポイントである。
面白いのが、このチェックポイントを強化しちゃうわけじゃないんです。
だってG1・G2は細胞自身(がん・正常細胞問わず)の故障チェック機能だからね。
抗がん剤でDNAを損傷されたがん細胞は、G2のチェックポイントでお水を飲んだり、備え付けの薬草を食べて復活しちゃいます。
ではどうするか。
一時的にG2の機能自体を止めてしまうのです。
そうすると抗がん剤を食らってダメージを負ったがん細胞は、その修復ができずに死んでしまうというわけ。
なるほどねー。
このG2チェックポイント阻害剤と抗がん剤を一緒に投与すれば、G1をスルーしたがん細胞はG2で修復されずに死滅。
一方で、G1チェックポイントはちゃんと機能しているため、傷ついた正常細胞はG1で修復。
細胞周期
*上みたいな感じらしいよ(出典:僕作成)
こんな感じで治療が可能になるだろう!とキャンバスは考え、化合物の改良に努めてきました(主要パイプラインCBP501)。
キャンバスの創薬の考え方や基盤技術は、まさにこの過程で磨き上げられてきたのです。
フローサイトメーターという分析装置を用いて、DNA量を測定。
特定の処理をした細胞群を分析し、「正常細胞に影響が少なく癌細胞に作用する」化合物を見出し、より最適なものに改良していく。
それから非臨床試験や臨床試験を通じ、「なんでこの化合物ががんに効くのか?」という作用機序を明らかにしていく非常に地道なプロセスです。
創業から20年近くたった今でも、キャンバスのお薬のタネたちが上市するには長い時間が掛かるでしょう。
それでも会社の悲願である新たな抗がん剤開発を目指して頑張っている企業です。
会社名 | キャンバス |
所在地 | 静岡県沼津市 |
設立年月日 | 2000年1月18日 |
パイプライン | CBP501(悪性胸膜中皮腫、非小細胞肺癌 フェイズ1b実施中 CBS9106(固形癌)IND申請完了 フェイズ1実施中 |
時価総額 | 34億⇐上場バイオ最低レベル!(2017年10月時点) |
企業理念 | 「フェアであること」 「科学的・倫理的・経済的に正しい道を最短の距離・時間で進むこと」 |
スポンサーリンク
[ad#co-9]
キャンバスのパイプラインを紹介するぞ!
キャンバスはヒトを対象とした臨床試験の段階に進んでいるパイプラインを2つ持っています。
まずは何といってもCBP501でしょう。
創業以来のキャンバスさんの屋台骨であります。
CBP501
CBP501は、G2チェックポイントを阻害することによって、正常細胞に大きな影響を与えることなく、がんを抑制しようという考えに基づいて開発されました。
CBP501の原型となったG2チェックポイントをぶっ壊しちゃう化合物「TAT-S216」は、細胞傷害性抗癌剤(細胞のDNAに傷を入れて細胞分裂を阻害するお薬)と併用すると、G2チェックポイントを阻害し、いくつかの正常細胞に影響せずにがん細胞を死滅させたそうな。
そしてTAT-S216の細胞導入性(抗がん剤がより細胞に入りやすくする)と生体内安定性(体内でも分解されずに長く残る)を高めて完成したのが「CBP501」です。
2007年3月には、武田薬品にアメリカでのCBP501の共同開発・共同販促及びその他全世界での独占的開発・販売権を導出することに成功します。
その後、アメリカでCBP501とシスプラチン(プラチナ製剤と言われる抗がん剤)・ペメトレキセド(DNAの合成を阻害する抗がん剤)との併用による非小細胞肺癌および悪性胸膜中皮腫を対象としたフェイズ2を実施。
このまま順調に行くかと思われましたが……。
2010年、501の開発の進め方に見解の相違が発生したため、武田から契約を解消されました。
強力なパートナーを失ったキャンバスですが、それでも単独で臨床試験を進めます。
……その結果、
非小細胞肺がんのフェイズ2では主要評価項目(無憎悪生存期間)が達成できず。
「基本的には」主要評価項目が達成できなければ治験は失敗と見なされます。
株主大ショック。
しかーし。
この結果を解析することで、CBP501の新たな可能性が明らかになります。
それは従来から分かっていた、CBP501がプラチナ製剤のがん細胞への取り込みを促進し、がんの殺傷作用を高めることに加え、がん細胞を「免疫原性細胞死(免疫反応を引き起こしてがん細胞を死へと誘導)」に導くことです。
こうしたCBP501の新たな可能性が明らかになったことから、キャンバスはこのお薬の開発戦略を変更。
シスプラチンと免疫系抗がん剤のオプジーボとの併用による新たな臨床試験(フェイズ1b)開始を発表しました。
もう1回整理すると……
プラチナ系抗がん剤であるシスプラチンと免疫チェックポイント阻害剤のオプジーボ、そしてCBP501を組み合わせて投与することにより、
[aside]CBP501の可能性!
・CBP501が、シスプラチンの癌やっつけ効果を増強!
・CBP501が、シスプラチンの流入をがん細胞でのみ高めることで、正常細胞への影響を抑え、副作用を軽減!
・CBP501が、がん細胞が免疫から逃れようとするのを阻止する「免疫チェックポイント阻害剤」の効果を増強!
・CBP501が、傷ついたがん細胞の医務室であるG2チェックポイントを阻害して破壊!
[/aside]
こんな感じでしょうか?
CBP501のフェイズ1bで、今をときめくオプジーボやメジャーな多岐な癌腫に用いられる抗がん剤シスプラチンとの相性の良さが、キミたちと奥さんとの関係のように確認されれば、再導出の可能性が大きく高まると思われます。
期待大です!
CBS9106
キャンバスのもう一つのパイプラインがCBS9106です。
細胞の核には、がんを抑制するたんぱく質があります。
ところがXPO1という運び屋さんが、このがん抑制たんぱく質を核の外に運搬しているのです。
せっかくのがんと闘ってくれるたんぱく質なのに……。
ふざけやがってXPO1め!
ほんじゃ、XPO1のタイヤをパンクさせちゃえば良いじゃない?
っていうことで、キャンバスのCBS9106は、がんを抑制するたんぱく質を、細胞の核内から細胞質へと運ぶ役割を担っているXPO1の機能を阻害するものです。
これによって細胞の核内に、がん抑制たんぱく質がじゃんじゃか蓄積されていきます。
後はがんは自然に死んでくれるという仕組みですね。
もちろん、XPO1もがん細胞だけを運ぶ役割をしてる訳じゃないです。
大切なたんぱく質も一緒に運んでいます。
さっきふざけやがってって言ってゴメンね。
これまでのお薬はXPO1をずーっと安定的に阻害してしまったため、本来のお仕事もできなくしていました。
つまり副作用が大きかったとも言えます。
一方で、CBS9106はXPO1たんぱく質を分解する作用を保有。
阻害するというよりも分解させられれば、細胞は新たな阻害されていないXPO1を生み出しますので、正常細胞には影響を与えない⇒副作用も小さいお薬候補として期待されています。
アメリカでの開発はStemline社に導出。
2018年12月までのStemlineからアドバイザリー料と開発進捗に応じたマイルストーンの総額は約107億円(1ドル120円換算)です。
先日、小野薬品がアメリカのカリオファーム社が開発したXPO1阻害剤2剤の「日本、韓国、台湾、香港およびアセアン諸国」での独占的な開発権取得を発表しました。
契約一時金は25億円。
マイルストーンは総額で191.5億円という中々な規模の契約です。
小野薬品が買った化合物は創薬の段階も進んでいますので一概に比較はできませんが、CBS9106のアメリカでのフェイズ1が成功すれば、Stemlineとの権利外の地域(日本・中国・韓国・台湾)での導出が期待できるでしょう。
情報発信力はバイオ界ナンバー1!
というようなキャンバスさんですが、忘れちゃいけないのが情報発信力!
間違いなくバイオ銘柄の中で一番と言えるのではないでしょうか。
社長と財務役員のブログがスゴイ!
河邊社長と加登住取締役自らブログを書いてくれています。
株ブログ数あれど、お二人は最強のブロガーかもしれないぞ。
めちゃくちゃ分かりやすいもんなー。
2015年から月2ペースで更新してくれています。
ホルダーも非ホルダーもバイオ株投資をする人は必見です!!
決算説明会の質疑応答の書き起こしがスゴイ!
キャンバスさんは半期ごとに決算説明会の動画を配信しています。
ここまではワタクシが愛する3Dマトリックスさんと一緒ですが、違うのは3Dマトリックスが質疑応答を全カットしている一方、キャンバスはめちゃくちゃ詳細に書き起こしていること。
しかもすんごく丁寧に答えている様子が分かります。
証券会社のIRセミナーにも参加するなど、とても好印象。
「赤字でお金が必要だし、株を買ってもらいたいからじゃね?」
ってツッコミは無意味だ。
なぜならバイオベンチャーはほとんど赤字で、どこもお金が必要だから……。
ツイッターもやっているぞ!
キャンバスさんはツイッターもやっています。
ワタクシもさっそくフォローさせてもらったぞ。
ちゃんと定期的にツイートされています。
ちなみにマトちゃんもツイッターアカウントを持っていますが、わずか5ツイートでもう飽きちゃったのかスリープ状態です……。
キャンバスさん、偉いぞ!
HPの社長あいさつの写真がかわいい!
手を前に組んでいる感じが素敵!
誠実そうな印象じゃないか。
育ちが良さそうじゃないか。
……まぁこれはどうでも良いか。
でも社長あいさつすら載せてない会社もあるもんなぁ。
例えば3Dマ……略。
まとめ
・キャンバスのパイプラインの作用機序は明確!
・2大パイプラインのフェイズ1に大注目!
・バイオ関連で時価総額は最低レベルでも、情報公開は最高レベル!
・導出できなければ上場廃止も!!
2000年の創業から時間は経ちましたが、まだパイプラインはフェイズ1の段階。
本当に創薬は大変だよなぁ。
ただCBP501の開発戦略についても明確になってきましたし、今後の進展が期待できます。
もちろん、Stemlineからのアドバイザリーフィーが無くなる2019年以降の上場廃止に伴う株券紙切れリスクは考慮しておくべし!
当然のことながら交渉候補先もキャンバスの上場廃止リスクは分かっているはずなので、時間が経てば経つほど交渉で優位に立たれる(安売りせざるを得なくなる)恐れもあり。
それでも時価総額は安いので、投資判断は両パイプラインの成功を信じられるかどうかでしょう。
論文などにより作用メカニズムが証明され、成功の確度は上がっていると思います。
それでもやってみなけりゃ分からないのが治験。
まさにハイリスク・ハイリターン銘柄です。
経営方針や情報公開の積極性など、個人的にはとても好感を持っています(実際に投資するかは別ですが)。
今後の治験の行方に大注目しているぞ。
頑張れ、キャンバスさん!
コメント