いつもお世話になっております!
ワールドカップで盛り上がっていますが、元日本代表監督の岡田武史さんとは一ミリも関係のない3Dマトリックスの岡田社長が2018年4月期の決算と、今後の中期経営計画についての説明をしました。
これまでの説明動画から比べて10分以上も長く熱弁!
あまりの気合の入りように、素直なぼくはまた期待をしちゃうぞ。
とりあえず気になったところを自分への備忘録として残しておきます。
あ、第一の感想はめちゃくちゃ横文字フレーズが多い!
ぼくっておバカさんで英語が苦手なんだから。
すんごい英会話の勉強になっちゃったわ。
ありがとう岡田社長。
止血材が販売遅延の理由について(抜粋)
1.代理店のやる気あるやつとやる気ねーやつの差が激しいんだ!
止血材が相変わらず売れてない件について。
以前から説明があったように事業売却とか事業承継なんかもあって、代理店が思うように動かなかったとのこと。
医療機関から注文はあっても代理店が動かないので、他の代理店の他の製品に切り替えられちゃったこともあり売上が伸びなかったんだって。
……そんな簡単に「メンドクセーから他ので良いや」って切り替えられちゃう製品ってどうなのー?ってツッコミは今日は置いといて。
ただし、主要国については安定感のある代理店と関係を構築できたとのこと。
ドイツはスペインに本社があって5,000億の売上があるウェルフェンのドイツ子会社のnicolaiと、イギリスは2兆円の売上があるUDGヘルスケアの子会社のアクイラントという会社を新たな代理店としてゲットしたと得意げな岡田社長。
グループ全体の売上を強調するところがうまいぜ。
プレゼンの参考にしてくれよ。
なお、今後の対応策としては、代理店じゃなくて直接注文を受けられる体制を構築すると。
代理店に対してのイライラが伝わってくる口ぶり。
また代理店はpurastatの「製品の強みとか活かせる領域」がよく分かってないので、マトちゃん側が自ら臨床現場に入っていってサポートしていく方針ということです。
日本じゃ考えられないけど、ヨーロッパの会社ってこんなにテキトーなのか。
注文あるのにガン無視するとか。
まぁでも確かに単なる代理店契約だと限界があるよな。
売れなきゃ売れないでマージン取るだけの代理店側には大きなリスクないもんね。
最低購買量もマトちゃんは請求しないから、あってないようなもんだし。
ちなみに、スペインは地元の代理店が良い動きをしてくれなくて、新しいより大型の製品を手に入れたのでどうやらそちらに注力しており、ペンタックスに変えたとのこと。
ペンタックスが「ぜひやらしてくれ!」って言ったそうな。
それなら良かったですね。
ただし以前の動画では「イタリアとスペインの代理店のモチベーションはものすごく高い! だけど公共病院の入札が始まんないから売りたくても売れないんだ!」って言ってたことをぼくは忘れないよ。
……状況はコロコロ変わるものだってことにしておきましょう。
*岡田社長の横文字フレーズ:「この反省を踏まえて、我々はプロアクティブに攻めるディフェンスができる体制を作っていく」。
2.ヨーロッパの新製品購買プロセスがものっすごい長い!
お医者さんが使いたいと言っても、購買側の審査がめちゃくちゃ厳しいので、実際に先生の手元に届くまで半年とか1年かかるケースがザラにあるそうな。
今後の対応策としては、止血材の臨床データが各種学会で発表されてきているので、使いたい先生がそのデータを管理側に提出して購買プロセスをスムーズになるようサポートしたいと。
まぁまぁこれは納得。
さらにイギリスでは20の施設が参加をする止血材の臨床研究が始まります。
その名もPOPS(the Prospective Observational Purastat Study)。
オフィシャルにはpurastatの最適な使い方の共有や、止血効果・安全性の検証などを目的に行われるとは書いてあるけど、要は「止血材の使い方をよく検討して、標準的な使用法を決めちゃおうぜ。それでイギリスの内視鏡手術ではこういう風にpurastatを使ってください」というスタンダードにしちゃうための活動とのこと。
手技が明確になれば新規のお医者さんも使いたくなる!
ただし、短期的にはもう一つおいしいネタが。
このスタディ、purastatをタダであげるんじゃなくて、買ってもらうものです。
これに参加をしちゃったらもう管理や購買部門も認めざるを得ないので、さっき書いた長いプロセスを省略できます。
参加した20の病院がルーチンで1年使ってくれるようになれば、普通に1億くらい売上立っちゃうんで短期的にもインパクトがあるぞと岡田社長。
……1億が大きいかどうかはともかくとして、スムーズに進展してくれたら良いなと思うプロジェクトです。
*岡田社長の横文字フレーズ:「これは国のブラントがつくプロジェクトで、要はナショナルプロジェクト。最初のエンロールメントを夏にやる」。
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長い購買プロセスを経て、ようやく200や300の病院にpurastatが届いた現状。
お医者さんが自分たちでpurastatを買って、自分で臨床現場で使い、自分で学会発表するという広がりは出てきました。
1施設当たりの購買額は小さいですが、今後は購買量を増やしてもらったり、導入病院数を増やしていきたいと意気込む社長。
使って→発表して→それをツールに広げていく
「好循環が見えてきた」と強気だ。
……ただこの循環に関しては何回も聞いたことがある言葉なので、早く実績として数字を上げてほしいところです。
日本の止血材の治験について
進み具合が前回発表時から遅れていることが気がかりだった国内の治験。
理由としては治験を開始してからの半年間で「どういう症例に使うべきで、どういう症例には使うべきじゃないとか、またはこういう使い方をすべきであって、こういう使い方をすべきじゃない」という先生方の意思の統一にかなり時間を掛けたと。
つい最近になってようやく「どんどん患者さん入れちゃってー!」スピードアップした状況ということです。
そ、そっかあ。
良いとは言わないけど、治験は遅れるのは当たり前なところもあるからね……(投げやり)。
分かったよ待つよ。
ここで失敗するわけには絶対にいかないから、慎重にやってください。
現在治験中の内視鏡以外の領域(心臓血管外科とかね)でも、PMDAと一緒に製品価値が活かせるところで治験を進めていきたいとのことです。
後出血予防材の申請状況について
去年の12月に再申請した後出血予防材。
臨床データについては「足りない」とは言われていないとのこと。
前向きな中身の議論をしているところで、半年以内には承認が取れるんじゃないかと見ているそうです。
秋ですね、秋。
また同時期に、イギリスのポーツマス病院で進んでいた90症例の後出血予防材のランダム化比較試験の内容について学会発表が予定されています。
もちろん結果については岡田社長は述べられませんでしたが、なんとなく良い数字は出ているのかなあという感じ。
ただし、やっぱりなんで審査機関はこの比較試験のデータを要求してこないのかが謎。
今後提出要求はあるかもしれません。
秋に承認取れればよいけど、どうなりますか。
なお、この製品はオンリーワンの製品なので市場規模は推測するしかありません。
出典:3Dマトリックス2018年4月期決算説明会資料
ヨーロッパの先生にヒアリングしたレベルでは最大で350億。
ただし、その内ポリペクトミー(良性腫瘍とかの隆起した病変をチョッキンってする手術)の275億っていう推計はお医者さんの「ガッツフィーリング(直観ってガッツフィーリングっていうんだね……)でブレは大きい」と。
残りのEMR(内視鏡的粘膜切除術)などは、現状、承認はまだされてないんだけれども、実際には既にお医者さんが勝手に後出血予防目的で使用しているpurastatの実績ベースから算定しているそうです。
オンリーワン市場なので競合はいない。
秋から営業マンも拡充して強力に営業を進めていく方針の模様。
うん、それは良いんじゃない?
*岡田社長の横文字フレーズ:「ポリペクトミーについてはガッツフィーリング。秋からジャンプスタートをしたい」
癒着防止材は動物実験実施中
鼻の手術後の癒着を防止する癒着防止材。
現在も動物試験が実施されており、今期中に承認申請、さらには承認まで取る計画です。
既存製品から約100億程度の市場規模があると推計しています。
しかーし。
岡田社長、この辺からどんどん熱が入ってくる。
「鼻向けの既存製品はあるけど、ただこの製品はある触れた素材で、ヒアルロン酸だとかでんぷんの粉であったりそういうの振りかけて、ないよりはマシくらいで使っているだけ。ドクターも売ってる会社も満足してないもの」
と他社製品をディスります。
ボディランゲージも激しさを増してくる。
こんな熱い岡ちゃんは初めてだぞ。
マトちゃんの製品は止血、治癒促進、癒着防止を同時に実現できる画期的な製品だと強調してました。
こちらも後出血予防材と同様に、あくまでもオンリーワン製品として来期のどこかではアメリカで販売を開始したい!とのこと。
もう成功を祈る!しかないよね……。
*岡田社長の横文字フレーズ:「オンリーワンの製品としてポジショニングして、来期のどこかでUSで売上を立てたい」。
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次世代止血材は中枢神経分野がターゲット!
これから臨床試験に入っていく次世代止血材。
ただし狙うターゲットとしてpurastatと同じ領域だと売上へのインパクトは小さいです。
うん、次世代止血材に置き換わっちゃうだけだもんね。
なので、マトちゃんは次世代止血材については新しい領域に参入をしたいとのこと。
↑ついては大賛成。
現在考えているのは脳や脊椎の中枢神経の分野を一つのターゲットとして考えているそうです。
これは始めての情報でしたね。
現場からのニーズは高く、市場規模も心臓血管外科に次ぐ規模とのことで、こちらも今期中の臨床試験が計画されています。
いやぁこうしてみるとやっぱり下期にイベントが集中する感じですね。
purastatと次世代止血材の棲み分けは気になっていたので、その辺は具体的に戦略を立て始めてきた印象です。
*岡田社長の横文字フレーズ:「新たな領域を入れてアディショナルな売上を取っていく」
歯槽骨再建材は今期FDAと協議開始
ここはサラッと流しやがった……。
あんまり触れたくないのかな。
多分、症例数を増やしての追加試験になるでしょう。
ほぼほぼ終わったので今期FDAと協議するということです。
今後の方針については増資をした後に発表するのではと勝手に予想しているんですが、どうなりますか。
TDM-812は治験継続の方向は変わらず!
トリプルネガティブ乳がん用のTDM-812。
以前の記事でも一つの可能性として書きましたが、治験期間中に目標とする症例数までいかなかったそう。
ただし結果的には意義があるものが出ているので、継続の方向で協議しているとのことです。
こちらも結果については正式な発表を待ちましょう。
中期経営計画について
一番大事な中期経営計画について。
今後は止血用途以外の製品(後出血予防材とか癒着防止材とか)の売上を拡大していくことと、欧州以外での製品販売を増やしていきたいとのこと。
「多角的」に「他地域」に販売を拡大していくことでリスク回避を図ろうというもの。
事実、エリア別にみるとオーストラリアは今期実質黒字化をしたと満足気。
ただこれってどういう意味で「黒字化」って言ってるのかなあ。
「売上は既に7,000万ありますし」ってドヤ顔で言ってますけど、今期は全社で2億2,000万の売上で粗利が5,000万しかないんだよ。
で、最終損益は18億の赤字でしょ?
販管費とかほぼほぼ本社に乗っけて、現地の社員だとか事務所の家賃だとかしか粗利から引かずに「黒字化」って言ってんならあんまり意味ないよね。
戦略的には悪くないようにも思えますが、南米については全く売れてないので、リスク回避になってないし。
他地域と言っても闇雲にやるんじゃなくて、事前のリサーチをしっかりやった上で進めてほしいな。
あと、一番大事なヨーロッパについては来期黒字化する計画ということでした。
ちなみに去年の中計では今期(19年/4月期)に黒字化をするっていったんだよなぁ……。
期ズレについては代理店のせいにして華麗にスルー。
*岡田社長の横文字フレーズ:「製品を出した地域では黒字化するというユニットエコノミーを証明していきたい」
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ヨーロッパ販売提携について
今回の動画で一番うれしかった言葉。
「来期はヨーロッパにおいて販売提携をしたいと思っておりまして、やはり大手の医療機器の会社さんと組みたいというのは悲願! これは最大の努力をして何とか今期にやりたいと思っております。力のあるメーカーさんが付いてくださることによって、グロースの確度がかなり高まる」
髙村前社長の頃は「最終段階」とかって期待を煽りながらも、近年はアップサイド要因と強調して、川の流れのように流していた印象の欧州全土を対象とする大手医療機器との販売提携。
今回は「今期にやりたい」と明言しました。
さらに「彼らがやるって言えば、200億や300億になると思ってるからやるんであり、10億とか40億なんて数字は大したことない。通過点にしか過ぎない。早くそういう状況に持ち込みたい」とボルテージも最高潮に。
「ファイナンスの金額はともかくとして」とも言ってるので、計画値の販売提携一時金20億っていうのは下がるかもしれません。
これはもう最初から信じてないんで良いよ。
金額は気にしない。
決まれば手のひら返しまくるよ。
ただし契約形態がどうなるのかとても興味がありますね。
代理店として主要国で大手と組み始めたばっかりなのに、欧州全土を対象とする販売提携先が決まるのか。
考えられるのは以下の3パターンくらい。
①販売提携先に独占販売権を付与する!
⇒そうなると他の代理店をバッサリ切ることになる。今更これはできない気がする。
②販売提携先を間にかませて、マトちゃん→ディストリビューター→各国代理店みたいな感じで売っていく。
⇒これが現実的なところですかね。
やる気のない代理店が出てきたら、ディストリビューターが直販していく感じ。
ただしディストリビューターと代理店は競合企業の可能性があるので、その辺はどうやってウィンウィンに持っていくか。
③代理店はそのまま残して、ディストリビューターには独占権は付与せずに単に欧州全土で売ってもいいよ権を付与する。
⇒うーん。
一番ディストリビューターにしてはおもしろくないですよね。
各国に代理店が散らばっていてpurastatを売ってたら、「なんで俺だけ一時金払わなあかんねん」ってなるもんね。
本気で売ってくれるか心配。
ま、こんなことは決まってから心配すりゃいいや。
それと岡田社長は「大手が本気になれば10億や40億なんて大したことがない」って言うんであれば、代理店とは言えども大手が揃ってきた現状で今の売上水準はどうかと思いますが。
来期以降の契約一時金は確度が高い!
今期も一時金の数字合わせで、レンジとはいえ黒字化計画を出してきたマトちゃん。
ただ何度もブログでも書いていますが、ヨーロッパの販売提携で一時金20億は無理でしょ。
そんなぼくの疑問に答えるように、岡田社長はこう言っています。
「来期以降の一時金については、相手との交渉によって取れるか取れないかといった不確実性の部分ももちろんあるけど、既に契約に明記されているものもある」
どういうこと?
日本の止血材の承認が取れたら扶桑薬品から入ってくるマイルストーンとかを言ってるのかな?
なお、規模的にはそれによって赤字から黒字に出来るかというほどの一時金かどうかは分からないけど、少なくとも大幅に赤字を削減できる規模の一時金とのこと。
承認なんかが取れさえすれば入ってくる一時金ってことなので、欧州契約よりかはまぁ確実性は高そう。
あとは治験成功を祈るのみ……。
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まとめ
・岡田社長のプレゼンを聞くのが初めてだったら全力買いしてたかもしれない。
そう。
忘れてはいけないことはただひとつ。
毎回説明会の動画はこんな感じで期待を煽りまくっているけど、実績が付いてきていないこと!
資金調達についても一切触れなかったね。
「トータルとして6億円くらいキャッシュは減っている状況」と何の問題もないように言って、次のスライドに映っちゃいました。
キャッシュはつきかけてるんで早々何らかの形で資金調達をしてくると思います。
今の状況だとワラントの可能性が高いと思っていますが、どうなりますか。
来年の今頃、ぼくはどういう気持ちでこの記事を読み返しているのだろう!
とりあえずぼくにお国がくれたニーサの恩恵を受けさせてくれ!
助けてくださーーーーい!!!!
yukiyukiさん、いつも有難うございます。
確かに岡田社長のボルテージは高かったですね。(あのセンター分けの髪形はご趣味でしょうか?)
でも、もう「結果」しか信じられない…。
カナダでの承認は「ぎりぎり間に合わなかった」っておっしゃってましたっけ?
改めて、極東の中小企業のオッサンが、蛮勇を振るって「新製品」を全世界に問うている、という印象を受けました。
後出血予防材(欧州)と癒着防止材(米国)がコケたら、見切りをつけるつもりです。
増資までに、何か発表できる材料はあるんでしょうか?(カナダ?、POPSの英国政府倫理委通過?)